中高年世代はすでに治療済みの歯が何本もある。それでも「予防歯科」を始める意味はある、ということを説明しておきたい。
こんな研究がある。日本ヘルスケア歯科学会の岡恒雄氏は、60歳から79歳までの患者を対象に、定期的なメンテナンスを受けた群と、メンテナンスを受けなかった群に分けて、10年間に失った歯の数を検証した。
60代では、両者にほとんど差はなかったが、70代のメンテナンス群は、1.1本喪失に対して、非メンテナンス群は4.4本と、実に約4倍の差が出た。つまり、中高年世代にとっても、予防歯科は効果を期待できるのだ。ただ、同学会・代表の杉山精一氏は、こんな言い方をする。
「予防歯科という言葉だけが一人歩きしている感があります。予防歯科とは何なのか、という定義づけはされていません。
虫歯には、食習慣、プラークコントロール(*注)、唾液、いろんな要因が絡んでいますから、歯科医と一緒に、どこに要因があるか考えて対応することが大事です」
【*注/歯磨きやフロスなどで、プラーク(歯の表面に強固に付着しているネバネバした虫歯や歯周病の原因となる細菌の塊)の増殖を抑えること】