臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々を心理的に分析する。今回は、4月1日に発表された新元号を分析。
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「平成」に代わる新元号が「令和」と決まった。あちらこちらで新元号が予想されていたが、“令”という漢字はそのどれもになかったように思う。これまでにない音の響きが、時代の移り変わりを感じさせる。
会見に臨んだ菅義偉官房長官は、濃紺のスーツに鮮やかなブルーのネクタイを締め、かなり緊張した面持ちだった。その声はいつになく強く、話し方も音を区切るようにはっきりとしていた。
「新しい元号は『令和』であります」と述べると、胸を張って墨で書かれた新元号を顔の横に掲げた。掲げる瞬間、口元がわずかにほころび、目じりが下がって微笑んだように見えた。そこには晴れがましささえ感じられる。額縁を掲げている間は口を真一文字に結んでいたのだが、頬は緩み、口元もきつく閉じられてはいない。感情の高まりをこらえているような口元なのだ。
菅官房長官はその額縁を右へ左へ向けて、顔の横にしっかりと掲げた。掲げる度に記者の方へ視線を向ける。その様子から「元号を発表したのは自分だぞ!」と、よい緊張とともに誇らしさを感じているような印象を受けた。今回は元号だけでなく、それを誰が発表するかも注目されていたこともある。
だが、そう感じたのは菅官房長官の表情だけは理由ではない。「平成」の元号を発表した時の小渕恵三官房長官(当時)と対照的だったからだ。