今年の新入社員のタイプは、声をかけないと動かない“AIスピーカー型”と名付けられた(産労総合研究所発表)ようだが、上司にとって「扱いづらい」との声が多いのは、意外にも高学歴の新入社員だ。では、受験秀才型新人ほど陥りやすい挫折とは何か。『「承認欲求」の呪縛』などの著書がある同志社大学政策学部教授の太田肇氏が指摘する。
* * *
社会の高学歴化にともない、高学歴の新入社員が増えている。しかし、彼らのなかには仕事や会社にうまく適応できない者が少なくないようだ。一見すると対照的な、2つのタイプを紹介しよう。
◆タイプ1「思い上がり型」
これは実際にあったケースだ。いわゆる最難関の大学を卒業し、準大手サービス業の会社に就職したA君は、自分の学歴がいちばん優れていることを誇りに思っていた。当然、本社の中枢部署に配属されるものと信じていたが、辞令を受け取ってみたら出世コースとはほど遠い部署に配属されていた。
しぶしぶ赴任したものの、仕事がばからしくて、まったくやる気が出ない。周囲の人ともほとんど口を利かず、だんだんと孤立するようになり、ついに出社しなくなってしまった。
すると彼の父親がいきなり会社へ乗り込んできて、「息子をあんなところに配属するとは何事だ!」と人事部にクレームをつけたのである。やむなく採用試験や研修中の成績、面接結果などを父親に知らせ、納得させて帰したそうである。
また、つぎのようなケースもたびたび起きている。
会社から派遣、あるいは会社を休職して海外のビジネススクールに留学し、MBA(経営学修士)の資格を取って帰国する。ところがせっかくMBAを取得しても、日本の会社では特別扱いされることがない。そこで自分の能力を評価してくれない会社に見切りをつけ、辞表をたたきつける。
MBAに希少価値があった以前ならともかく、MBAホルダーがあふれているいまの時代には、それがキャリアアップの切り札にはならない。外資系企業などに就職できた者は少数で、大半は前の会社よりも恵まれない待遇や環境のもとで働いているのが実態である。