早くも話題を呼んでいる新しいNHK連続テレビ小説『なつぞら』。朝ドラ初となる全編アニメーションのオープニングなど新しい試みが話題になっているが、そうしたチャレンジのカゲで、NHKは失敗しないようにキャスティングではしっかり保険をかけていたようだ。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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前作『まんぷく』が好評のうちに幕を閉じ、4月1日から新たな朝ドラ『なつぞら』がはじまりました。同作は記念すべき100作目の朝ドラであり、NHKにとっては、絶対に失敗できないアニバーサリー作。初回視聴率が22.8%(ビデオリサーチ、関東地区)を記録するなど、順調なスタートを切ったことで胸をなでおろしているのではないでしょうか。
放送開始前、制作サイドは「困難に負けずひたむきな朝ドラらしいヒロインを描く」という原点回帰の方針を掲げていました。近年のヒロインは、『まんぷく』今井福子(安藤サクラ)のような天真らんまんなタイプ、『半分、青い。』楡野鈴愛(永野芽郁)のようなユニークなタイプ、『ひよっこ』谷田部みね子(有村架純)のようなドジなタイプなど、いずれもマイペースな印象。それだけに「両親を戦争で失い、引き取られた北海道の牧場で必死に働く」という『なつぞら』のヒロイン・奥原なつは、かつての朝ドラに戻ったような感があります。
近年、苦労を苦労と感じさせないようなマイペースなヒロインが多かったのは、「苦労が続く重苦しい展開を避けたがる現代の視聴者に対応しよう」という理由からでした。つまり、時代に合わせてヒロインのキャラクターや作風を変えていたのであり、その意味で『なつぞら』の原点回帰は、リスクのあるチャレンジになります。
しかし、そこはさすがNHK。前述したように「絶対に失敗できない100作目」だけに、リスクを軽減すべく、キャスティングで5つの保険をかけていたのです。
◆7人の歴代ヒロインと10人のイケメン俳優
1つ目は、ヒロインに若手屈指の知名度と演技力を併せ持つ広瀬すずさんを起用したこと。前作『まんぷく』を飛び越える形で、約1年4か月前の2017年11月に早期発表されたのも、すでに人気があり、期待感を高められる広瀬さんだから成立したことです。
2つ目は、歴代の朝ドラヒロインを7人起用していること。ヒロインの育ての母親役を『ひまわり』の松嶋菜々子さんが務めるほか、2話に『娘と私』の北林早苗さんが出演し、今後も『おしん』の小林綾子さん、『純ちゃんの応援歌』の山口智子さん、『ふたりっ子』の岩崎ひろみさん、『どんど晴れ』の比嘉愛未さん、『ちりとてちん』の貫地谷しほりさんの出演が発表されています。さらに、まだまだ追加出演が期待できるでしょう。
3つ目は、幅広い年代からそろえた10人のイケメン俳優。ヒロインの養祖父役に草刈正雄さん(66歳)、養父役に藤木直人さん(46歳)、アニメーション編の作画監督役に井浦新さん(44歳)、兄役に岡田将生さん(29歳)、幼なじみ役に山田裕貴さん(28歳)と工藤阿須加さん(27歳)、ヒロインに絵を教える友人役に吉沢亮さん(25歳)、養父の長男役に清原翔さん(26歳)、友人の兄役に犬飼貴丈さん(24歳)、アニメーションの同僚役に中川大志さん(20歳)が発表されています。
4つ目は、舞台となる北海道出身の演劇ユニットTEAM NACSの音尾琢真さん、安田顕さん、戸次重幸さん。3人はドラマのPRにもひと役買うなど、序盤の物語に大きく貢献していますし、残る森崎博之さんと大泉洋さんの出演も噂されています。
5つ目は、語り(ナレーション)を内村光良さんが務めること。内村さんにとってドラマのナレーションは初挑戦であり、昨年大みそかに総合司会を務めた『第69回紅白歌合戦』の生放送中にサプライズ発表されたことからも、期待の大きさがうかがえます。
◆総力を結集した“NHKフルキャスト”