『女性の品格』(PHP新書)が330万部を超えるベストセラーとなってから12年──。72才になった坂東眞理子さんが人生の後半期を生きる大人たちへ向けて、『70歳のたしなみ』(小学館)を新たに書き下ろした。世間一般の年齢観を覆す前向きで熱いメッセージの数々が早くも話題になっている坂東さんに話を聞いた。
「一般的に70というと“終わった人”“年寄り”といったネガティブなイメージが強く、人々は晩年意識で終活を意識し始めます。かくいう私も、2年前に70になった当時は記事などで“70才”と年齢を紹介されるたびに『私はもう70なんだ…』と自分自身で年寄りのレッテルを貼って、そんな自分を省みてさらにショックを受けてしまって(苦笑)。周囲を見ても、60代はまだ中年意識を持って多方面で活躍をしている人が多かったのに、70になると第一線を退いてしまう人が多いように感じます。
ですが自分も含めて、人生100年時代を迎えた今の70代は、一時代前よりも活力に溢れて元気ですし、まだまだ家族や若い世代を支えて社会の役に立つことができる。そこに気づいてからは、年寄り気分で自らしぼんでしまうことに反発したいと思うようになりました。この本は晩年意識へのアンチテーゼとして、『“もう”歳だから“どうせ”“いまさら”とあきらめずにポジティブに生きましょう』という、後半生を生きる大人への応援メッセージです」
では70代はどんな時代か。坂東さんは、晩年という暗くしんどい「終活」の時間ではなく「ゴールデンエイジ」、人生で最も幸福な時間ではないかと考えている。
「70代は30代や40代のように仕事や子育てに追われることもなく、50代や60代のように人生の新しいステージに対する焦りや不安もなくなり、心に余裕を持って人生を俯瞰することができる。人のお世話にならずに自分で行動できますし、新しいことに挑戦して、明るく希望を持って過ごせる時間だと思っています。
歳を重ねるとあそこが痛い、ここが老いたと失ったものを数えがちですが、『100点満点の健康ではなく70点、80点でも、まだあれもこれもできる。それって素晴らしいことよね』と、マインドセットを変えてみませんか」
黄金時代の70代を謳歌するには、50代、60代からの心構えが鍵になると坂東さんはアドバイスを送る。
「30代の盛りと比べたら50~60代は体力が落ちてきますし、巷には高齢化社会でやれ介護だ、病気だ、年金がもらえないと、悲観的な情報が氾濫して中年期から早々に晩年意識を植え付けられてしまうけれど、あまり深刻に考えすぎないことです。
現代人は周囲から反発されないように自分を守ろうと、若い頃からいいことや幸せなことはなるべく隠して自虐するような風潮が広がっていて、それも日本全体を暗くしていますね。“気だけは若い”というのは私の口癖ですが、多くの人は体は元気なのに、気だけが老いているんです。年齢を重ねることに希望や自信を持つことも大事だと思います。
私は29から30になる時に『これで私の青春はおしまいだ』と落ち込んで、40になる時には『40代なんてもうおばさんだ』と絶望したけれど(笑い)、嫌だった30代も、振り返ってみれば女盛りで楽しかった。20代では見えなかった楽しさが30代にはあり、40代も別の充実の時期でした。毎日が充実していた人ほど次のステージへ上がることは怖いけれど、いざ踏み出してみるとまた違うステージに着きます。
幸福曲線があるとしたら、私たちはある年齢まで幸せ度が上がったら後は下がるだけ、と人生を“放物線”で捉えがちですが、そうではありません。世代ごとのステージは別物なんです。見えなかったものが見えたり、感じなかったことを感じたりすることが年齢を重ねる醍醐味。70だって捨てたものじゃないと、毎日を楽しんでいますよ」
※女性セブン2019年4月18日号