いざというとき頼りになる病院。「難しい試験や研修を経ている医師たちなのだから、どこも同じでしょ」と思いきや、実際に患者が受ける対応には大きな差がある。
都内に住む3児の母、飯山佐智子さん(39才・仮名)は、こんな体験談を話す。
「家の近くのクリニックに10年近く通い続けました。子供が熱を出したときは、待たされた挙句に診察は3分。薬はたくさん出るものの、1人だけいる看護師さんは子供が泣いても表情ひとつ変えないで事務作業に忙殺されている。ですが、忙しいからそんなものか、と思っていました。
でもママ友から勧められてほかのクリニックに行ってみたら、設備はきれいだしスタッフもたくさんいる。そのうえネット予約ができるからほとんど待たなくていい。何よりお医者さんの説明がわかりやすく丁寧だった。風邪にはもう抗生物質を出さないのが当たり前だと、そこで初めて知ったんです。病院を替えてから、待ち時間は半分になりました」
生活習慣病の治療のため、長く通院している千葉県の鈴木幸江さん(63才・仮名)も最近病院を替えたばかり。
「高血圧の持病があり、長いこと同じ病院に通院していましたが、どうしても主治医と意見が合わなくて。私は薬に頼らず、食事や運動で改善したいと思っていたのですが、先生は『とにかく薬をのまなきゃ血圧は下がらないよ』の一点張り。診察中もパソコン画面から目を離さないうえ、希望を伝えると露骨に嫌な顔をされたりもしました。
そこで一念発起して、自分で食事や運動療法に力を入れている病院を探したんです。今は医師とのコミュニケーションもうまく取れ、薬では下がらなかった血圧が順調に落ち着きつつあります。病院を替えて、診察時間は倍に、薬はこれまでの半分に減りました」
患者の立場からすれば、医師はみな、難しい試験を突破した「医療の専門家」だ。だが、当人たちに話を聞くと、「正直に言うと、医師のレベルは個人間でかなり違いがある」との声が上がる。都内の総合病院に勤務する外科医が明かす。
「診療外の時間も最新の学術論文を読んだり学会に出たりして熱心に勉強して臨床に取り入れる先生がいる一方、開業医の中には医師というよりも“経営者”になってしまっている人も散見されます」
特に医療の世界は日進月歩。過去の常識がひっくり返ることも珍しくない。医療問題に詳しいジャーナリストの村上和巳さんが指摘する。
「残念ながら、最新の医療情報がアップデートされていない医師が一定数存在します。たとえば、風邪の患者に抗生物質を出していた時代がありますが、ウイルス感染である風邪に抗菌剤は効かない、というのは今や常識。それどころか耐性菌が生まれてしまう恐れさえある。にもかかわらず、現在でもただの風邪で抗生物質を1週間分も出す医師が存在するのです」