昨今、がんをはじめとした治療に複数の選択肢があり、難しい病気においては患者が納得のいく治療法を選択できるよう、診療を受けている担当医とは別に、違う医療機関の医師に“第二の意見”を求める「セカンドオピニオン」の考え方が浸透しつつある。医療経済ジャーナリストの室井一辰さんが言う。
「セカンドオピニオンの本来の意味は、さまざまな意見や方法を聞き、今の主治医のもと、納得して治療を受けることが目的の行動です。“セカンドオピニオン=病院を替えること”ではないのです」
それでは、セカンドオピニオンではなく、いざかかりつけの医師を「替えたい」と思ったら、どのように「いい病院」を見つければいいのか。
一口に医療機関といっても、個人開業医が運営するクリニックから、大勢のスタッフを抱える総合病院、大学病院など多くの種類がある。どう使い分けたらいいのか。医師や医療に詳しいジャーナリストたちは「まず最初にかかるべきはクリニック」と声をそろえる。多くのメディアで「外科医けいゆう」のペンネームで情報発信する、消化器外科医の山本健人さんはこう話す。
「近所の身近なクリニックは定期的に通いやすいのがメリット。最初に行くべき医療機関はかかりつけにできるクリニックです」
継続的に自分の体調を管理してもらえるメリットも見逃せない。医療問題に詳しいジャーナリストの村上和巳さんは、こんな利用法を伝授する。
「大病院は医師や看護師なども含めスタッフの異動が頻繁にあり、希望の医師の診察を受け続けるのはなかなか難しい。信頼できる医師がいても、3~4年で異動してしまうのが普通です。だから日頃から腰を据えて相談できるクリニックの先生の診察を受けておき、大がかりな検査や治療が必要になったら、その先生に設備の整った総合病院や大学病院を紹介してもらうことをお勧めします」
とはいえ、特に都市部では多くのクリニックが林立し、どこを選んだらいいのか悩んでしまう。そんなときに頼りになるのがインターネットだ。
「最近は、小さなクリニックでもホームページを持っているところが多くなりました。行く前に、一度アクセスしてみることをお勧めします」(村上さん・以下同)
まずチェックすべきは、医師の経歴だ。
「大学病院の講師や准教授まで務めた人が開業したクリニックは大学病院レベルの医療が受けられるうえ、出身の大学病院を紹介してもらう場合にも顔が利きます。そのほか、院長が並行して大学病院の非常勤講師として教鞭を執っているクリニックもある。そういった病院は医療の質も担保されていることが多いのです」
医師の経歴とともに確認したいのは「症例数」の項目。
「該当の病気について、その病院でどれだけ治療したかの数である『症例数』が多い病院の方が、スタッフが持つ知識や経験が豊富だといえる。ただこのときに注意すべきなのが、『医師1人あたりどのくらいの数か』ということ。『200例』と書いてあってもその病気の専門医が5人いれば1人あたりで担当した数は40例になるが、専門医が2人ならば1人で100例担当したことになる。1人あたりの症例数が多い病院ほど、医師の経験値が高いといえるでしょう」