先月、コカインを使用したとして麻薬取締法違反の容疑で逮捕されたピエール瀧が4日、勾留先の警察署から保釈された。ミュージシャンとしてデビューしながら、ここ数年は俳優としての才能が開花し、朝ドラにも連続して出演。現在放送中の大河ドラマ『いだてん』でも重要な役を演じていた彼の逮捕は芸能界に大きな衝撃を与えたが、これまでの芸能人の逮捕劇とは違った反応が現れている。
瀧が逮捕されたのは3月12日のこと。売れっ子だけに、その影響は甚大だった。『いだてん』は撮り直しが決まり、NHKは『龍馬伝』『あまちゃん』など、過去の出演作のオンデマンド配信を停止。静岡朝日放送のレギュラー番組『ピエール瀧のしょんないTV』は打ち切りになった。また、5月公開予定の映画『居眠り磐音』は代役を立てての撮影となり、電気グルーヴのコンサートは中止。出演していたCMもすべて差し替えられている。
清原和博氏、酒井法子、ASKAなど、芸能・スポーツ界の有名人が違法薬物で逮捕される事件は珍しくないが、瀧の逮捕に対する世間の反応は異なっている。これまで、有名人が逮捕された際には猛バッシングに晒されるのが常で、擁護した者まで炎上することもあったが、評論家の荻上チキ氏は、逮捕直後の報道について、「芸能人のスキャンダル報道になっていて、薬物依存症問題を丁寧に報道したものはほとんどない」と、自身のラジオ番組で苦言を呈し、千葉商科大学国際教養学部専任講師の常見陽平氏は、過度の誹謗中傷に警鐘を鳴らす一文を『アゴラ』に投稿。好意的な声が寄せられた。また、こういった動きは言論人だけに留まらず、瀧に対しては、
「いつかまた良い演技を見せて欲しい」
「ちゃんと薬断ち切って戻ってきてほしい。頑張れ」
「あれだけの才能と人柄だもの。罪を償って復帰して欲しい」
と、同情的なコメントがネットには次々と登場。4日に保釈された際には、ファンから「頑張れ」「前科があってもへっちゃら」などと温かい声も飛んだ。
薬物で逮捕された場合、初犯の場合は執行猶予が付く場合が多く、懲役1年6か月、執行猶予3年が相場だ。しかし瀧は取り調べに対し、20代の頃から薬物を使用していたと話しているという。都合30年間も薬物を使用し続けていたとすれば常習性、依存性は高く、遵法精神の欠如を指摘されれば、より重い判決が下される可能性もある。要するに「法律をナメている」ということだ。それでもなぜ擁護の声が出るのか? ベテラン芸能記者の石田春男氏は、こう分析する。
「理由の1つは、ピエール瀧のキャラクターでしょう。例えば清原和博氏の場合、“番長”などと呼ばれる悪童キャラだっただけにアンチも多かった。一方、酒井法子は、『ぶりっ子キャラだったくせに、あれは全部ウソだった』という怒りが、人々をバッシングに向かわせました。その点、ピエール瀧はお世辞にも“いい人キャラ”ではなく、むしろ危なっかしい感じが魅力になっていたため、意外性が少なかったのだと思います。
また、“タイミングのよさ”もあったと思います。ここ数年、不祥事を起こした芸能人が猛バッシングに遭うケースが相次いでいますが、世間もいい加減、そういった風潮に嫌気がさしていたタイミングでピエール瀧が逮捕され、配信停止や公開中止などの処置が行われたことで、これまでほとんど出なかった『作品に罪はない』という意見が出始めました。そういう意味では、“たまたま潮目が変わる時期に逮捕されたのがピエール瀧だった”というのが、正解なのかもしれません」(石田氏)
瀧には今後、莫大な賠償金の返済という大きな壁が待ち受けているが、しっかり更生して芸能界復帰が叶えば、返済できるチャンスはありそうだ。