新元号「令和」が発表され、いよいよ新しい時代が幕を開ける。そして、天皇陛下のご退位と、皇太子さまの新天皇ご即位に関連し、重要な儀式・行事が目白押しだ。
10月22日に予定される即位礼正殿の儀。各国の国家元首や国内外の代表らが招かれ、天皇の地位を示す王座「高御座」から即位を宣言する場だ。その様子を人々が目にするのはテレビの映像を通してのみ。
そんな厳粛な儀式だが、実は長い歴史から見ると、明治時代より前の即位式は一般庶民も見物可能だったという。
『遊楽としての近世天皇即位式』(ミネルヴァ書房)の著者である森田登代子さんが話す。
「1630年の明正天皇の即位式を描いた『御即位行幸図屏風』、1826年の『新嘗祭之図』などを見ると、近世以前の即位式は今とはまったく違っていたことがわかります。特に、江戸時代、京都御所で開かれる即位式は、皇位継承による天皇の権威を公家以外の庶民にまで広く見てもらうことが重要でした」
庶民も直接見物できることで、厳粛でありながらも“フランク”な雰囲気だったという。
「近世以前の即位式は、庶民と一緒に祝う『祝祭空間』という位置付けでした。そのため、御所の南庭には、男性100人、女性200人の庶民が詰めかけた。それこそ、老若男女が活気に満ちた表情をし、見物客の喧騒で、静粛を促す咳払いの声もかき消されるほど。それでも、誰も暴れたりはせず、なかには泣き声で儀式を遮らないよう、子供に授乳する女性の姿も描かれています」(森田さん)
今は、一世一代の儀式として、天皇皇后両陛下が即位式でお召しになる装束などは着回しされないが、当時は装束や天皇の王冠を修理・手直ししたりしていたという。
「即位式は、庶民が宮廷文化に触れられる貴重な機会でもあり、皇族や公家の最新ファッション(装束)を目の当たりにできるファッションショー的な側面もあったようです」(森田さん)
そんな庶民にとって親しみやすい遊楽の場が変わってしまったのが、近代の明治以降。
「明治政府が、欧米の列強を見て強大な君主を必要としたため、ナーバスなまでに厳格な儀式に変えてしまいました」(森田さん)というのだ。
※女性セブン2019年4月18日号