5月1日、新しい「令和の時代」が幕を開ける。天皇陛下のご退位と、皇太子さまの新天皇ご即位に関連し、重要な儀式・行事が目白押しだ。
崩御以外での天皇の御代がわりは、江戸時代の光格天皇以来、実に約200年ぶりで、現憲法下でははじめてのことだけに、儀式の内容やその様子は前例のないものになりそうだ。
一連の儀式のなかでも、ひときわ謎のベールに包まれているのが、11月に予定される「大嘗祭」だろう。
大嘗祭とは、天皇の即位後に初めて行われる「新嘗祭」(毎年開かれる収穫祭)のことで、皇位継承に伴う一世に一度の重要な祭礼だ。
皇居・東御苑に特設される「大嘗宮」で新穀を神々に捧げ、新天皇自らそれを食され、国家国民の安寧と五穀豊穣を祈念する儀式だ。今年は11月14日夕方から翌15日未明にかけて行われる予定。
しかし、報道陣はもちろん、外部の人間や宮内庁職員でさえ完全にシャットアウトされ、具体的な内容もまったく明かされない「秘儀」とされる。約9時間にわたり、大嘗宮の最奥部でお籠りになる間、一体何が行われているのか。浸透学者で皇室研究者の高森明勅さんが解説する。
「大嘗宮は、37の建物からなるうち、主に悠紀殿・主基殿、それから廻立殿の三殿で儀式が行われます。悠紀殿、主基殿の中心に寝座があることから、“新天皇が先代の天皇のご遺体とともに寝具の中に入る”などさまざまな説がありますが、多くは空想です。
実際には、天皇が下位の立場になって天照大御神に丁重に給仕をし、陛下も同じものを召し上がる。夕方から翌日の明け方にかけて、悠紀・主基両殿で神様をおもてなしするため、同じことを2回行うから時間がかかるのです」
大嘗祭で両陛下がお召しになる祭服について、宮内庁関係者が明かす。
「両陛下は、まずは廻立殿で、沐浴などで心身を清められた後、最初に悠紀殿、次に主基殿に入られます。それぞれの御殿に移動するたびに心身を清め、着替えられるため、儀式全体では、天皇が4度、皇后が2度の着替えを行います。清める布も体の部位ごとに替えるため、大変な儀式です」
平成の大嘗祭の時は、11月22日午後6時30分から翌日未明(午前3時34分)まで9時間もかかったという。今回の大嘗祭では、費用削減のため、悠紀・主基両殿の屋根材が茅ぶきから板ぶきに変更される。それでも、大嘗宮の建設費は27億円にのぼり、儀式後すぐに取り壊される。
受け継がれてきた伝統を守る背景には、これだけの謎が隠されている。新たな時代の幕開けを、この目で見守っていきたい。
※女性セブン2019年4月18日号