4月10日、天皇皇后両陛下がご結婚60年の節目を迎えられた。お二人が長い歳月、国民に寄り添い、全身全霊で公務に励んでこられたお姿は、日本中の人々の胸に強く刻まれている。
5月からは皇太子さまが新天皇となり、秋篠宮さまが皇嗣殿下となられるが、皇室の一員としての心得や立ち居振る舞いなどは、親から子へどのように伝えてこられたのだろうか。陛下と70年以上にわたって交流があり、『天皇陛下のプロポーズ』(小学館)の著者でもある、織田和雄さんが知られざるエピソードを教えてくれた。
「気づいている人はほとんどいないと思いますが、陛下は拍手をされるとき、いつも左手を固定し、右手だけを動かしています。秋篠宮さまの拍手のやり方も、陛下と同じです」
一方、皇后さまは両手を動かして真ん中で打ち合わせて拍手され、陛下のやり方と異なるという。皇太子さまが拍手される時は、皇后さまのこの方法に倣って、両手で行っていると織田さんは指摘する。
そもそも、拍手はこう行うものという決められた定義がなく、賞賛や賛成の気持ちを表すために、日本だけでなく世界で行われている身体的動作だ。手を叩いて音さえ出れば、どんなやり方でも構わないのではないかと思いがちだが、陛下と皇后さま、2通りの拍手のやり方には深い意味が込められていると考えられる。
真ん中で手を打ち合わせる拍手は、手のひらではなく指が先に打ち合うため、見た目には大きな動作に映るものの、音がすぐに消えてしまう。だが、陛下が行っている拍手のやり方なら、左の手のひらを右の指全体で太鼓のように叩くことから、大きな音を会場いっぱいに轟かせやすい。つまり、拍手は方法によって、生じる効果が違ってくるというわけだ。そのことに関して、織田さんはこう話す。