コンプライアンスの厳しい昨今、芸能人であっても「品行方正」を意識するのは仕方ないかもしれない。しかし、かつての芸能界には社会ルールを逸脱し、その身を滅ぼしながらも芸に生き、演技でも私生活でも暴れ回った彼らは危うく、しかし魅力的だった。
そんな破滅型スターのひとり、松竹新喜劇で“アホ役”として一時代を築き、上方の喜劇王と呼ばれた藤山寛美(享年70)は、1966年当時のカネで2億円もの借金を抱える「ナニワの借金王」でもあった。
「クラブではわざと酒をこぼして『クリーニング代や』といって何十万円もはずむし、ホステスにマンションを借りてやっていた。だけど、女遊びだけの人じゃない。かつて月亭八方が借金で困っていた時、寛美さんが『芸人にとって借金は勲章や。好きなだけ使いなさい』といって革のカバンを渡した。開けると現金1000万円が入っていたそうです」(関西の芸能関係者)
指パッチンで1970年代のお笑いブームを牽引したポール牧(享年63)も、清濁を併せ呑んで全てを芸に昇華した。
人気絶頂の1979年に、私財をつぎ込んで劇団を立ち上げるも、赤字続きで2000万円の借金を抱える。1983年には失踪、自殺未遂騒動を起こし、長い低迷期に入るが、1990年代初頭に指パッチンで再びブレーク。
「兄の死去をきっかけに1996年に得度すると、“僧侶芸人”として各地のイベントに呼ばれるようになった。借金も失踪も、自身の経験を全てネタにして、毎回大ウケでした」(牧の知人)