日本の女性の死因ナンバーワンである大腸ガン。急にはじまった便秘は、危険だと警鐘を鳴らすのは松生クリニック院長の松生恒夫さんだ。では、どのように便秘を改善していけばいいのだろう。
便秘対策としてすぐに浮かぶのは、やはり“乳酸菌”と“食物繊維”だろう。
「確かにヨーグルトなどの乳酸菌は、ある程度、腸内環境を整える効果は認められており、食物繊維もスムーズな排便に必要な栄養素です。しかし特に高齢者の便秘の原因は単純ではなく、本来は大腸内視鏡検査などで原因を見極め、原因に則した対策が必要です。便秘を治すため、やみくもに乳酸菌や食物繊維を摂ることが、高齢者には逆効果になることもあるのです。
たとえばヨーグルトなどは若い人の軽い便秘なら改善の期待が持てても、腸自体の機能が落ちた高齢者では難しい。便秘対策にと、多量のヨーグルトを食べことで、便秘が改善しないばかりか乳脂肪摂取過多になり、悪玉コレステロール値の上昇にもつながりかねません。
また、健康イメージが高い玄米は、不溶性食物繊維が豊富で消化が悪く、腸に停滞しやすい面も。噛む力が弱い高齢者には逆に便秘を助長することになります」
便秘対策の認識を新たにした方がよさそうだ。改めて高齢者の便秘を改善し、腸をよくする方法を聞いた。
◆水溶性食物繊維とEXVオリーブオイル
「まず、大腸にエネルギー源を与えることが重要です。大腸のエネルギー源の筆頭は酪酸と呼ばれる短鎖脂肪酸の一種。食物繊維が分解することで産生され、酪酸が不足すると腸は充分に動けません。
ただ食物繊維の中でも、玄米やいも類、豆類、根菜類などに多く含まれる不溶性食物繊維は前述のとおり摂りすぎると逆に便秘のもと。キウイやバナナ、りんご、もち麦などに多い水溶性食物繊維に注目しましょう。水分を吸収してふくらみ、便をやわらかくする働きがあります。
食物繊維が多い食品には不溶性・水溶性ともに含まれますが、比較的不溶性が多め。私が臨床現場で検証したところでは、便秘改善には不溶性2:水溶性1の割合がよく、その割合のためにも水溶性食物繊維を積極的に摂るようにするとよいでしょう」
もう1つ松生さんが強く推すのがエキストラバージン・オリーブオイルだ。ヨーロッパでは古くから便秘解消効果が認められている。
「オリーブオイルに含まれるオレイン酸が小腸を刺激し、大腸の中の滑りを促進。便通を促すと考えられています。ただし多量に摂ればよいのではなく、ほかの脂質とのバランスも考え1日30ミリリットル以内、毎日続けることが大切です」
また朝食を食べることも重要だという。独居の高齢者などは手を抜きがちなところだ。
「人の体は体内時計に従って動いています。腸などの消化器も例外ではなく、便通を促す腸の蠕動運動は朝、食事後に最大の大蠕動が起きるのです。朝食を食べないと大蠕動が起こりづらく、便秘しやすくなります」
このほか、高齢者に多い冷えやストレスが交感神経を優位にして腸の動きを悪くすることも知っておきたい。入浴などで体を温め、季節の変わり目には、体やお腹を冷やさない服装を心掛けたい。
※女性セブン2019年4月25日号