石けんやハンドソープなどを購入する際、殺菌・消毒効果が強力そうな商品を選ぶ人は多い。しかし、この行動は、健康を損ねる可能性があるという。これらに含まれる抗菌成分「トリクロサン」「トリクロカルバン」は、かつて多くの商品に使われていた。
米国では、トリクロサンを含む石けんが40年以上前から売られ、日本でも、1990年代に病原性大腸菌O157の被害が広がると、抗菌剤に注目が集まり、トリクロサンが配合された薬用石けんなどが広く使われるようになった。
しかし、2016年に米国食品医薬品局(FDA)が「トリクロサン」と「トリクロカルバン」を含む商品の販売禁止を発表。理由は、“抗菌効果が認められないばかりか、人体に悪影響を与える”というものだった。
医師でウェルネスクリニック神楽坂院長の賀来怜華さんはこう語る。
「トリクロサンの健康被害は、すでに2012年に米カリフォルニア大学の研究チームが発表していました。研究では、人間の筋力を低下させることがわかっています。また、近年の研究では、抗生物質が効かなくなったり、免疫機能に打撃を与えるといった問題も指摘されています。免疫機能が弱まれば、がんの発症を促す可能性もあり、重大な病気を引き起こしかねません」
人体への悪影響の方が大きいトリクロサン。FDAの決定を受け、日本でも厚生労働省がトリクロサン配合の商品の成分変更を促す通達を出し、メーカー側もハンドソープへのトリクロサンの使用を中止するなど、自粛の流れが強まってきている。しかし、こんな見方もある。
「実は、厚労省が通達した対象商品は、薬用石けんに限定されていました。そのため、薬用石けん以外の商品は、今でもドラッグストアで売られています。成分表示をよく読み、使われていないものを見極めて買うべきです」(賀来さん)
日々の買い物で少し気をつけるだけで、家族の健康を守ることができる。今日から成分表示を確認する習慣を身につけたいものだ。
※女性セブン2019年4月25日号