中国広東省広州市の民族宗務事務局が3月、最高で1万元(約17万円)の賞金を提供するなどとした新たな条例を施行したことが明らかになった。対象は、海外の不法な宗教団体の主要メンバーの身柄の拘束や、中国内外の宗教団体の国内での不法な活動の解明につながる情報の提供者だ。
中国内の地方政府が、海外を含めた違法な宗教団体の活動などの情報の密告を奨励する条例を制定するのは初めて。この背景には宗教が反体制活動につながることを警戒する習近平指導部の意向が強く働いているとみられ、中国では今後一層、政府非公認の地下教会などの取り締まりが強化されることが予想される。香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」が報じた。
中国では宗教は国家が認定したもの以外は違法な団体の活動として「邪教」とみなされる。中国政府が公認しているのは、カトリック、プロテスタント、イスラム教、仏教、道教の5つのみだ。他には55の少数民族がそれぞれ信仰する先祖や自然崇拝などの民族宗教が事実上容認されているだけで、団体の指導者は国家あるいは地方政府の認定が必要だ。
このため、中国内の新興宗教や、ましてや外国の宗教団体が新たに容認されることは事実上不可能だ。
中国では昨年5月、重慶、丹東、寧夏回族自治区、河北省、河南省、貴州省、山西省などで、日本人21人を含む韓国のキリスト教団体のメンバーら30人以上が逮捕されたほか、一昨年10月には広東省でも10人以上の日本人が拘束され強制送還されるという事件が起きている。
これは昨年2月に、中国政府が新たな宗教に関する規制強化の条項を含んだ中国宗教事務条例を施行したことなどを受けての措置とみられる。
今回の広州市の事実上の「密告条例」の制定は、習近平指導部の内外の違法宗教に関する厳しい姿勢を裏付けている。
条例によると、海外の違法な宗教団体の指導者に関する情報は5000元(約8万5000円)から1万元(約17万円)の賞金が与えられるほか、それらの宗教団体の活動に関する情報は3000元から5000元、さらに中国内の「邪教」について情報は100元から3000元となっている。
これと関連して、国家の宗教規定に違反した宗教指導者や活動家、信者への罰則は2万元から20万元となっており、当局の違法な宗教に関する規制の厳罰化が際立っている。