これまで「検査」と言えば、すでに発症している人の病気を見つけるためのものがほとんどだった。たとえば「がん」なら、画像診断などの検査で疑わしい結果が出たら、細胞を採取して病理検査を行ない、診断を確定する。
検査は「治療」の第一歩だが、ひとたび発症すれば治療や薬に費用がかかり、入院や手術で患者の体への負担が大きくなることもある。発見が遅ければ最悪の場合、治療できないケースもある。
だからこそ、“最新検査”は「病気になる前」に注目する。医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が指摘する。
「健康なうちから重大な病気になるリスクを知り、予防を心がけることがより重視されるようになってきました。その流れのなかで『数年後にかかる病気』のリスクを極めて高い精度で推計できる、最新の検査が登場しています。現代の治療は、“病気を治す”のではなく、“病気にかからない”を目指す方向にどんどん進化してきているのです」
かつては発症前の兆候をつかむことが困難とされた病でも、発症を未然に防ぐ道が開けてきた。近年、警戒すべきがんの筆頭と指摘される大腸がんもそのひとつだ。東京高輪病院健康管理センター長の古川恵理医師が解説する。
「大腸がんは2016年に新たにがんと診断された患者数がトップ。死亡者数も年間4万8000人を超え、肺がんに次いで2番目に多い数字となっています」
その一方で、大腸がんは「治るがん」とも言われ、ステージIなら5年生存率が90%近く、ステージIIIでも60%を超える。
「通常、大腸がんの多くはポリープが悪性化してできるので、早い段階でポリープごと除去すれば完治できます。早期発見・早期治療なら体の負担が少なく、治療期間も短くて済みます」(古川医師)
にもかかわらず死亡者が多いのは、早期発見が難しいからだ。初期の大腸がんはほぼ無症状というケースが多く、がん検診でも見落としが目立つ。