2019年は「年金カット元年」といわれている。どういうことかというと、年金受給額が自動的に減らされる「マクロ経済スライド」が発動され、年金額は徐々に目減りしていくのだ。
老後の資金不足に備えるためには、今のうちから「自分で年金を作る」、つまり、「じぶん年金」を持つことが大事なのだ。
そうした背景の中で、毎月のイデコやつみたてNISAと一緒に検討したいのが「米国債」だ。
突然「米国債」といわれてもピンとこないかもしれないが、米国債とは、アメリカ政府が発行する「債券(借用証書)」のこと。アメリカにお金を貸して、元本と金利分を受け取るというものだ。それなら、日本国債でもいいように思えるが、米国債のメリットの方が断然多い。
第1に「安全」なこと。発行国(政府)が破綻しない限り、貸したお金が返済されないことはなく、国の信用度にもよるが、株や投資信託など他の金融商品よりも安全性は高い。また、世界一の大国であるアメリカが潰れてしまう可能性は日本よりも低いといえる。
『証券会社がひた隠す米国債投資法』(KKベストセラーズ)の著者で、かつて米ゴールドマン・サックス証券で債券営業に携わっていた杉山暢達さん(現ゴールドハーツ代表)が説明する。
「米国債は、世界の富裕層、日本や中国の財務省といった国家財政を司る公的機関も大量に保有するほど、安全で堅実な金融商品です。また、購入した証券会社が万が一倒産しても、証券会社とは別勘定で保管されているため、なくなる心配もありません」
第2のメリットは「金利が高い」こと。国債は一般的に満期が長いほど金利が高くなるが、日本国債(個人向け)の金利が年数にかかわらず0.05%であるのに対し、米国債の金利は現在、10年満期で2.5%前後、30年満期で2.9%前後となっている。
「米国債には、定期的に利子を受け取れる『利付債』と、満期まで利子が付かない『ゼロクーポン債』があり、じぶん年金として私がお勧めしたいのは後者です。ゼロクーポン債は、運用中の利子がない代わりに、満期までの利子相当分があらかじめ差し引かれ、その分購入時に安く買えます。
たとえば、野村證券で取り扱うゼロクーポン債のうち、4月12日時点で満期最長のものが26年9か月です。満期で1万ドルを受け取るための購入金額は、4802ドルです。
一方、それより短い、満期まで10年3か月のものは購入金額が7924ドルと高くなってしまいます。老後資金として準備するなら、元手が雪だるま式に膨らむ複利効果を最大限享受できる長期のものがよい」(杉山さん)
ゼロクーポン債は、購入した時点で満期時に受け取る金額が決まっており、現状ではその購入価格は期間が長いほど安い。イデコやつみたてNISAのように上限額もないため、たくさん購入した分だけ利益が得られる。
その投資効果を見てみよう。たとえば、300万円を利回り2.8%のゼロクーポン債で運用した場合、30年後には686万円と2倍以上になり、386万円も増えたことになる(為替変動、税金は考慮せず)。
実際には、30年満期のものが販売されていることは少ないが、なるべく30年に近い長期のものを買うことで資産は大きく膨らむことが期待できるのだ。