〈南朝鮮の学生への手紙〉──4月1日、韓国全土の大学、役所、裁判所など450か所に、こんなタイトルの壁新聞が掲げられた。
「雇用王 文在寅」「経済王 文在寅」「外交王 文在寅」と大仰な枕詞を付けながら、「通貨危機以降最高の失業率を達成した」「最低賃金の引き上げで小商工人が滅び、アルバイトは永遠に休みになった」と、“北朝鮮流”の扇動文章で徹底的に文政権を皮肉っている。
「今回の壁新聞を出した学生団体は、昨年末にも同様の壁新聞を全国100か所以上の大学に出している。ネット上では『文在寅王シリーズ』として、次の“刊行”を楽しみにするファンまで現われています」(韓国の全国紙記者)
韓国民が唖然としたのは、この壁新聞に捜査当局が動き出したことだ。
「大統領への侮辱罪に当たるとして、ソウル警察庁が内偵捜査を始めたのです。事実関係を調べ、近く正式捜査に切り替えるか決定する。これには現地メディアも『無理な法適用だ』と猛反発しています。学生による単なる風刺で、そもそも壁新聞は“ほめ殺し”なので侮辱にあたる言葉がない。政権の顔色を窺った警察の暴走です」(同前)
なお朝鮮日報は、今回の壁新聞について、〈この国の現状を正確に指摘している〉と、社説でその中身に“お墨付き”を与えている。
4月11日のトランプ大統領との会談が2分で終わり、文大統領の外交手腕が改めて問われる中、今度は国家権力が暴走──国民の支持は下がるばかりだ。
※週刊ポスト2019年5月3・10日号