オリンピック3大会に出場し、個人総合2連覇を含む7つのメダル(金3、銀4)を獲得、現在も現役で2020年東京五輪を目指す体操の内村航平(30)。7日間しかなかった昭和64年(1月3日)生まれの内村は、平成を代表するアスリートのひとりに間違いなく数えられ、現役でありながらすでに「レジェンド」と呼ばれている。バルセロナ五輪銀メダリストの池谷幸雄氏が、内村がなぜ体操界の常識を覆した「スーパーレジェンド」と呼ばれるのかについて語った。
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一言で言えば「体操界のスーパーレジェンド」。こんな選手は今まで見たことがありません。
内村選手のことを知ったのは彼の高校時代です。ジュニアの国際大会で優勝したのですが、実はまったくの無名選手でした。一般的に体操は小学校の頃から頭角を現わすことが多く、初めて注目されたのが高校生というのはあまり前例がありません。
現代の体操競技で成績を残すためには小さい頃から技を追求していかないといけません。内村選手も3歳から元体操選手のご両親の下で体操を始めていますから、もちろん幼少時から技を磨いたでしょう。ただその一方で彼は体幹であったり、筋力、柔軟性などの基礎の部分を人一倍鍛えていたのでしょう。その蓄積された基礎が土台となり、高校になって元々持ち合わせていた才能が一気に花開いたのだと思います。
それが内村選手の最大の特徴である「器用さ」を生みました。体操は6種目もあるため、大体の選手には得手・不得手があります。例えば白井健三選手でいえば、床と跳馬は図抜けているが、それ以外は世界レベルではない種目がある。ただ内村選手はすべてが世界トップレベルという、驚異の器用さを持ち合わせているオールラウンドプレーヤーなのです。そのため内村選手は、体操選手としては最高の栄誉である「個人総合」の王座を手にすることができるのです。