国内

天皇皇后両陛下、退位後は「高齢者のあり方の象徴」に

三重県訪問が在位中最後の地方訪問となった(撮影/JMPA)

 名残を惜しむような冷たい雨が降り注ぐなか、黒塗りの車が伊勢神宮内宮へとゆっくりと進む。美智子さまが後部座席の車窓から乗り出さんばかりに、沿道に向けて大きく手を振られた。大粒の雨が車内に飛び込みそうでも、その窓が閉じられることはなかった──。

 それはまるで皇祖神である天照大神の導きと思わせるほどの巡り合わせだった。

 天皇皇后両陛下は4月17日、伊勢神宮を訪問され、翌18日に退位を天照大神にご報告する「親謁の儀」に臨まれた。

 実は、両陛下がご成婚(1959年4月10日)のご報告のために、初めて伊勢神宮を参拝されたのは、60年前の4月17日、ちょうど同じ日だった。当時、沿道にて両陛下を見送った三重県松阪市在住の塚脇千鶴さん(75才)は、60年後のこの日も沿道に駆けつけた。

「両陛下を初めて拝見したのは私が高校1年生の時でした。美智子さまのお姿を見て“世の中にこんなにきれいな人がいるのか”と心底驚いたことを、昨日のことのように覚えています。退位されたら、どうかゆっくりとお過ごしになられていただきたいです」

 その10年後、美智子さまが長女の紀宮清子内親王を出産されたのは4月18日のことだった。今は皇室を離れ、黒田清子さんとして生活を送る傍ら、伊勢神宮の祭主を務めている。その清子さんが今回、祭主として両陛下の退位の報告に立ち会ったことになる。

「両陛下が参拝されたのは、ちょうど清子さんの50才の誕生日でした。前日にお三方は内宮の行在所(あんざいしょ)に宿泊し、地産の鯛のおつくりなどを召し上がられたそうです。翌日は同じホテルに宿泊されたので、親子水入らずで誕生日をお祝いされたことでしょう」(伊勢神宮関係者)

◆新時代のよき助言者に

 陛下は2016年8月、退位の意思を示されたビデオメッセージの中でこう述べられた。

「これまで天皇の務めとして、何よりもまず国民の安寧と幸せを祈ることを大切に考えて来ましたが、同時に事にあたっては、時として人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添うことも大切なことと考えて来ました」

 全国の津々浦々に足を運び、時には遠隔の孤島をも訪ね、人々と直接、触れ合われてきた。平成の30年間で、地方訪問は計473回を数える。陛下と美智子さまの長い長い旅が、今終わりを告げようとしている。

関連記事

トピックス

異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
《ラーメンを食べようとしたらウジ虫が…》「来来亭」の異物混入騒動、専門家は“ニクバエ”と推察「チャーシューなどの動物性食材に惹かれやすい」
NEWSポストセブン
「ONK座談会」2002年開催時(撮影/山崎力夫)
《追悼・長嶋茂雄さん》「ONK(王・長嶋・金田)座談会」を再録 長嶋一茂のヤクルト入りにカネやんが切り込む「なんで巨人は指名しなかったのよ。王、理由をいえ!」
週刊ポスト
タイ警察の取り調べを受ける日本人詐欺グループの男ら。2019年4月。この頃は日本への特殊詐欺海外拠点に関する報道は多かった(時事通信フォト)
海外の詐欺拠点で性的労働を強いられる日本人女性が多数存在か 詐欺グループの幹部逮捕で裏切りや報復などのトラブル続発し情報流出も
NEWSポストセブン
6月9日付けで「研音」所属となった俳優・宮野真守(41)。突然の発表はファンにとっても青天の霹靂だった(時事通信フォトより)
《電撃退団の舞台裏》「2029年までスケジュールが埋まっていた」声優・宮野真守が「研音」へ“スピード移籍”した背景と、研音俳優・福士蒼汰との“ただならぬ関係”
NEWSポストセブン
小室夫妻に立ちはだかる壁(時事通信フォト)
《眞子さん第一子出産》年収4000万円の小室圭さんも“カツカツ”に? NYで待ち受ける“高額子育てコスト”「保育施設の年間平均料金は約680万円」
週刊ポスト
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
《虫のようなものがチャーシューの上を…動画投稿で物議》人気ラーメンチェーン店「来来亭」で異物混入疑惑が浮上【事実確認への同社回答】
NEWSポストセブン
週刊ポストの名物企画でもあった「ONK座談会」2003年開催時のスリーショット(撮影/山崎力夫)
《追悼・長嶋茂雄さん》王貞治氏・金田正一氏との「ONK座談会」を再録 金田氏と対戦したプロデビュー戦を振り返る「本当は5打席5三振なんです」
週刊ポスト
6月9日、ご成婚記念日を迎えた天皇陛下と雅子さま(JMPA)
【6月9日はご成婚記念日】天皇陛下と雅子さま「32年の変わらぬ愛」公務でもプライベートでも“隣同士”、おふたりの軌跡を振り返る
女性セブン
懸命のリハビリを続けていた長嶋茂雄さん(撮影/太田真三)
長嶋茂雄さんが病に倒れるたびに関係が変わった「長嶋家」の長き闘い 喪主を務めた次女・三奈さんは献身的な看護を続けてきた
週刊ポスト
(インスタグラムより)
「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画…直後に入院した海外の20代女性インフルエンサー、莫大な収入と引き換えに不調を抱えながらも新たなチャレンジに意欲
NEWSポストセブン
中国・エリート医師の乱倫行為は世界中のメディアが驚愕した(HPより、右の写真は現在削除済み)
《“度を超えた不倫”で中国共産党除名》同棲、妊娠、中絶…超エリート医師の妻が暴露した乱倫行為「感情がコントロールできず、麻酔をかけた患者を40分放置」
NEWSポストセブン
清原和博氏は長嶋さんの逝去の翌日、都内のビル街にいた
《長嶋茂雄さん逝去》短パン・サンダル姿、ふくらはぎには…清原和博が翌日に見せた「寂しさを湛えた表情」 “肉体改造”などの批判を庇ったミスターからの「激励の言葉」
NEWSポストセブン