《原作が好きすぎるから映画は見ない》、《実写映画は必ず漫画の世界観を壊す》──。公開前、映画『キングダム』には原作の熱狂的なファンから、こんな批判的な声が相次いでいた。
『キングダム』は、中国史上初めて全土を統一した秦の始皇帝時代(紀元前3世紀頃)の史実をベースに、戦争孤児の少年・信が天下一の大将軍になろうと奮闘する姿を描く大人気漫画。コミックスは4月23日現在、54巻まで発売され、累計発行部数は4000万部を超える。
主人公・信を山崎賢人(24才)が演じるほか、吉沢亮(25才)、長澤まさみ(31才)、大沢たかお(51才)ら人気俳優が出演している。
「魅力的なキャラクターが織りなす人間ドラマ、熱い友情や飛び交う名言なども見どころですが、漫画だからこそ実現できるようなアクションシーンもある。さらに長期にわたる中国大陸の動乱を描いているので、これを実写化、しかも2時間程度に収めるなんて不可能だとファンは思っていたんです。
そもそも人気漫画の実写化で成功したといえるものはごくわずかですから。この作品も同じ道を歩むのでは、という声が広がっていました」(漫画誌編集者)
しかし、4月19日に公開初日を迎えると3日間で50万人を動員。興行収入は6億9000万円以上と、周囲の心配を吹き飛ばした。
「山崎さんをはじめ、俳優陣の“絶対にいいものを作る”という意識が強かったのが要因でしょう。アクション初挑戦の長澤さんはジムに通い筋肉を付け、大沢さんは役作りで17kgも体重を増やしていました。やはりプレッシャーがあったのかも。なにせ、今世紀の日本映画ではいちばんの予算ですから」(映画関係者)
この映画には、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントが製作に参画している。その存在が多額の製作費獲得に貢献したという。
「ソニーの代表は、あの映画『タイタニック』のエグゼクティブプロデューサーで、当時は製作の過程で、どんどんと予算を注ぎ込み、最終的に製作費が300億円にも達した。そんな彼が『日本映画に改革を起こしたい』と言って作ったのが、この作品。今回の映画では単行本でいうと5巻ぐらいまでで、興行収入40億円を超えれば続編が製作されるといわれていますから、ほぼ間違いなくそうなるでしょう」(前出・映画関係者)
こうした状況を山崎本人も予想していたのかもしれない。公開日前、都内で試写会イベントが行われていた。その帰り道、手応えを感じたのか、山崎の目は自信に満ち溢れているように見えた。
※女性セブン2019年5月9・16日号