天皇御即位満30年、御成婚満60年、そして、約200年ぶりの譲位による御代替わりという節目を迎える。天皇皇后両陛下が国民に思いを寄せて辿られた足跡は、人々の幸せと安寧を祈る、長く慈愛に満ちた旅であり、それはまさに、日本国民にとって幸福な日々だった。喜びも哀しみもすべてを包み込むように歩まれた姿を振り返る。
この30年、天皇皇后両陛下は国民の幸せを祈り、国民に寄り添ってこられた。お2人の出会いは、軽井沢のテニスコートだった。1958(昭和33)年に婚約が内定すると「ミッチー・ブーム」が巻き起こった。
「皇后陛下は日清製粉社長の御令嬢でした。皇族や華族の家柄ではない、初の民間出身である皇太子妃を国民は歓迎しました」(皇室ジャーナリスト・山下晋司氏)
御結婚後は皇室の慣例であった乳母制度を廃止。東宮御所に台所を作られるなど、国民と同じく家族との時間を過ごされた。
「こうした新しい皇室の家族像は、国民が親近感を抱くひとつの要因になりました」(山下氏)
即位後の1991(平成3)年7月10日、両陛下は長崎県雲仙・普賢岳噴火災害の被災地を訪れた。災害発生から1か月。火山活動が続く状況下での訪問に、宮内庁をはじめ専門家から反対の声があがったが、陛下の「どうしても」という強い意志で実現した。