低い声でささやきながら相手の心をコントロールしてしまう、謎多き紳士──。興収100億円突破もささやかれる劇場版『名探偵コナン 紺青の拳』で、コナンと敵対する“シンガポールの名探偵”こと、犯罪行動心理学者レオン・ローをその美声で演じきった山崎育三郎(33才)。ミュージカル界のプリンスが臨む、新たな挑戦。
「イケボすぎて…ニヤけてきちゃう」「えっ、ゲスト声優だったの? 違和感なさすぎて、気づかなかった」(山崎・以下同)
そう“コナン女子”をざわつかせているのが、山崎が演じたレオン・ローだ。シンガポールを舞台に繰り広げられる作品の中で、レオンのセリフの約半分は英語。だが、ミュージカルで培った彼の美声は“日・英”のセリフでいかんなく発揮されている。
「高校2年生の時にアメリカに1年間留学していたんですが、シンガポールの上流階級のかたがたはイギリス英語を話すと聞いたので、イギリス英語を先生について練習していったんです。でもいざ収録となったら、アメリカ英語の先生がついて…(苦笑)。一度“イギリス英語ではそう言わない”と直されたところを、また“アメリカ英語ではそう言わない”と戻す作業をしました(笑い)。
それよりも意識したのは日本語の発音です。日本語も英語の響きに寄せて発声するよう心がけました」
日本語は“世界一響かない”音構造といわれる。ミュージカル俳優の中には、声をより響かせるためにと、日本語の母音を英語の母音に置き換えて歌う人もいるという。
「英語って、たとえばYESでも“イエ~ス”と口をしっかり動かして、息を回して話すイメージがあるんですよ。だから英語は自然と声に奥行きが出るんですが、日本語は極端にいうと口を閉じてても話せてしまうので、ボソボソと聞こえてしまうんです。その差を埋めないとレオンが同一人物に見えないので、気をつけました」
本格的なアフレコは映画『美女と野獣』(2017年)に続き2回目。長編アニメーションへのアフレコは初となる。
「小さい頃から見ていた『名探偵コナン』の世界に入るのは、正直不思議な感覚で、震えるものがありました。ずっと聞いていた声と共にお芝居をすることは、今までにない体験で大きな挑戦でしたけど、とても面白かったです。
でもいちばん驚いたのは、コナンファミリー(声優陣)のかたがたの“声の圧”ですね。いざ自分がその立場になってみると、みなさんの熱量が自分が思うものより100倍くらい強かったんです。テレビドラマのような芝居のテンションで自分が喋ってもまったく成立しない。なので途中から“ここは大劇場、2000人を前にお芝居してるんだ”と言い聞かせて、練習していた何倍も声を張って、ミュージカルの舞台と同じ熱量で演じました」
ではネタバレしない程度に…映画の見どころは?
「なんといっても、“プリンス”がたくさん出てくるところ。工藤新一、怪盗キッド、京極真…みんなかっこよくて、王子様たちのアクションは見応え充分。お子さんだけじゃなく、女性ファンのかたがたも楽しめると思いますよ」
そう爽やかに微笑むリアルプリンス。彼の挑戦がやむことはない。
※女性セブン2019年5月9・16日号