ぶらり街歩きには最適な季節。三井財閥総帥の玄孫でもあるタレント・團遥香が「日本坂道学会」会長の山野勝氏を案内人に、東京の坂を歩いた。ここでは、都内屈指の名坂を紹介しよう。
●ゆ嶺(ゆれい)坂(「ゆ」は、「广」の中に「臾」)/外堀通りから神楽坂若宮八幡神社へと上る坂。「江戸初期、この辺りは美しい梅林だったそうで、真偽はともかく二代将軍秀忠が中国の梅の名所・大ゆ嶺に例えて命名したと伝えられています。なかなか高尚です」(山野氏)。江戸切絵図には「シンサカ」と記され、幽霊坂、若宮坂、祐念坂、唯念坂、祐玄坂、行人坂など数多くの別名を持つ
●逢坂/ゆ嶺坂の1本西側、旧東京日仏学院入り口脇にある史跡「堀兼(ほりかね)の井」から上り始めるかなりの急坂。坂上には最高裁判所長官公邸があり、江戸時代には武家屋敷であったことを忍ばせる。「奈良時代に都から赴任してきた小野美作吾が、さねかずらという娘と恋に落ち、都に帰った後に亡くなったが娘の夢に現われ、この坂で再会したという伝説が坂名の由来。美男坂という別名もあります」(山野氏)。外堀の北側は坂道密集地帯だ
●三浦坂/「谷中1丁目にある三浦坂は臨江寺と宗善寺の石塀に沿って走る名坂です。ほどよい傾斜とうねりがあり、両側から覆いかぶさる樹林のトンネルが美しく、寺と大名屋敷に囲まれた江戸の町の面影を残しています」(山野氏)。坂名は、美作(みまさか)勝山藩主・三浦家の下屋敷があったことに因む