製作終了から31年。男たちを魅了した「日活ロマンポルノ」の女優たちはスクリーンから去った後、どんな人生を歩んだのか──。谷ナオミや麻吹淳子らに続く逸材として脚光を浴びた小川美那子は、スレンダーな肢体とコケティッシュな声が魅力だった。
「渋谷でスカウトされたのがきっかけ。しかも『主役で映画に出ない? 日活だから裸にはなるけれど』とストレートな言い方でしたね」
ただし、デビューからほとんどが団鬼六原作を中心としたSM作品。撮影はハードなものばかりだった。
「体が丈夫で我慢強かったんですよ。たとえば逆さ吊りのシーンなんかは、テストでは助監督の方がおやりになる。ただ、それだと本番で照明の組み方をやり直すので時間がかかってしまう。だからフィルムを回さなくても私がやりました」
そしてSM映画特有の「限界を超えたシーン」が襲いかかる。
「ひたすら水を飲まされて腹がパンパンにふくれるという設定があったんです。実際にはホースの水は口の横から漏れる仕掛けなんですけど、それでも西村昭五郎監督は『腹をふくらませてくれ。ひたすら空気を飲めば自然とふくれるんだ』と。断わろうと思ったら『谷ナオミさんはやれましたよ』と涼しい顔で言うんです。私、負けず嫌いだから空気を何度も飲んで、お腹をポッコリさせましたよ」
ロマンポルノの終焉までを見届けたあとは、女優業は継続させつつ官能作家、貸しスタジオ経営、結婚紹介システムのサイトなど多彩な活動を展開する。実は日活でデビューする前に、短い期間ではあったが、結婚生活を経験している。さらに、2016年にはロマンスグレーの大学教授とも再婚。いずれも長く続かなかっただけでなく、やたらダメ男が寄ってくるという。