東京や大阪などの大都市で家を買うといえば、マンションの場合がほとんどだが、「都心で一戸建てを持つ選択肢も検討する余地がある」と指摘するのは、住宅ジャーナリストの榊淳司氏だ。では、戸建てのメリットとは何か、改めて解説してもらった。
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少し前まではマンションなのに一戸建てを意味する「家」という言葉を使うことに抵抗感があったが、今はほとんどなくなっている。東京や大阪では「家」にマンションも含まれるのだ。
それだけマンションが主流になったということだが、一戸建てを買う選択肢がまったくなくなったわけではない。ただ、市場のボリュームはかなり小さい。首都圏住宅市場への供給量だけ見ていると、建売住宅の戸数は新築マンションの約1.3割である。しかも、郊外がほとんどだ。
だが、ここではあえて書こう。都心で家を買うのなら戸建ても検討してみるべきだ。その理由を述べる前にまず、マンションと戸建ての違いをもう一度簡単におさらいしてみたい。
言わずもがな、マンションとは集合住宅であり、一戸建ては単体の独立住宅である。この点での最も大きな違いは、一戸建ての場合はハード面ならオーナーの一存で何とでもなる。例えば、地震で大きな被害を受けた場合、取り壊して建て直すか修繕を施すかはオーナーの自由だ。
しかし、マンションの場合は全区分所有者の5分の4の賛成がなければ取り壊すことはできない。修繕だけであれば管理組合の総会に集まった議決権の過半数で決められる。
だが、ここで厄介なのは、集合住宅であるマンションの場合は何事も区分所有者を集めて議決するという手続きを経なければならないこと。地震で被害を受けて緊急に総会を開くときでも、臨時総会を開けるのは最短で1週間後だ。議案などを整える必要もあるので、実際は1か月以内に開ければかなり早いほうだろう。
地震で被害受けなくても、たとえば「植え込みを取り払って自転車置き場にする」という議案があったとしても、全区分所有者の4分の3が賛成しなければいけない。その点、個人の一戸建てで庭に自転車を置くためには、何の手続きも必要ない。集合住宅は独立住宅に比べて、何かと手続きが煩雑なのである。