放送回を重ねるごとに話題のお仕事ドラマ『わたし、定時で帰ります。』(TBS系列火曜夜10時~)。物語もいよいよ中盤戦に差し掛かった。ドラマには「定時帰り」をめぐるさまざまな“あるある”がちりばめられており、視聴者に身近な内容になっているのも話題をさらう理由だろう。
たとえば、仕事が終わったと思って退勤したが、その後、トラブルが発生。不在の本人に代わりオフィスにいるメンバーでその場を切り抜けるといったことは現実でもよくある。ドラマの第4話でも、ウェブエンジニアの吾妻(柄本時生)が定時で帰った日の翌日、午前半休を取った彼のミスが発覚し、上司の種田(向井理)がカバーして事なきを得る場面がある。
そんな「定時帰りにまつわる“あるある”」を詰め込むだけではないのが、このドラマのおもしろいところ。「今後、普通の“お仕事ラブストーリー”になっていくのではないか」という筆者の勝手な懸念とは裏腹に、人生の幸福と仕事の関係の本質的なところに切り込んでいる。
たとえば第4話のメインキャラクターになったのは、家に帰らず、サービス残業をしまくる前述の吾妻だった。ヒロイン・東山(吉高由里子)のチームの一員である吾妻は、数時間の残業のあと一度退勤し、食事と風呂を済ませ、再びオフィスに戻って深夜一人で「サービス残業」をするというスタイルを続けている。まさにオフィスに“住んでいる”のだ。
「うちの会社にも、こういう人いるいる」と実感する人、多数。昨今、定時に帰れるようになってもあえて家にはまっすぐ帰らず、飲みに行ったり、書店や喫茶店で時間をつぶしたりして、結局、帰宅が遅くなる“フラリーマン”なる言葉も生まれている。
「自宅に帰ってもやることがない」。実はこれは、定時帰りがなかなか定着しないひとつの理由なのかもしれない。「人生なんて、ただの暇つぶしでしょ」とうそぶく吾妻。やりたいこともなければ、才能もない、どうせ出世も無理だろう、家にいても気が滅入るだけ……と、どこか人生をあきらめたような風情だ。
このドラマを毎週見ているという、社員200人の中堅製造会社を経営する70代のある社長はこう言う。