弾道ミサイルだったと聞かされたトランプ大統領は、どんなツイートや発言をするのか。そう思っていた翌日、米政治専門サイト「ポリティコ」のインタビューで「短距離ミサイルで、非常にありふれたものだ」と述べた。その上、「信頼を裏切ったとは考えていない」と答えたのだ。

 もう少し不快感を露にするかと思いきや、現実に目をつぶったとも取れる発言にちょっとだけ驚いた。だが、人は自分の信念や目指している結果と一致しない情報は、客観的に評価するのが苦手である上、情報の価値を軽減して捉える傾向があるといわれる。

 控えめな発言に変わった裏には、トランプ政権の思惑やら国際情勢やら、諸々の事情があるだろうし、トランプ大統領が目指しているのは非核化の実現ということに変わりはない。そこで、トランプ大統領が用いたのが「情報フレーミング」だ。

 情報フレーミングとは、同じ情報でも、枠組み(フレーム)の捉え方によって意味が変わることだ。同じミサイルでも「短距離ミサイル」とするか「弾道ミサイル」と呼ぶか、重大な問題と言うかありふれた普通のものと言うか、表現や説明が変わるだけで、人々に与える印象はがらりと違ってくる。

 それだけではない。自分自身がそれをどう捉えるかも変わってくる。トランプ大統領は自らが表現を変えることで、「信頼を裏切る行為ではない」と自分にも言い聞かせたのかもしれない。また、人は矛盾した情報に触れた後ほど、それまでの自分の思いや信念を強くするものだという。

 ミサイル発射を「ありふれたもの」と言われた金委員長は、さらなる行動に出る危険があると分析する専門家らもいる。米朝対話の継続を目指すトランプ大統領が、金委員長に裏切られたと思うラインはどこなのか。計算できない怖さがある。

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