健康情報番組で紹介された食品が、翌日にスーパーから消えることは珍しくない。健康意識の高まりで、“体にいい”とされる食べ物の情報が巷に溢れている。
だが、そうした食材について逆に「私は食べません」という医師が存在する。当然ながら、その理由は単なる好き嫌いではない。医学的な根拠に基づいて、自らの口に何を入れるかを判断しているのだ。
例えば、トマトには抗酸化作用のあるリコピンに加え、ビタミンA・C・Eなど多くの栄養素が含まれる。熱に強く油との相性もよいため、様々な料理に重宝される。
だがスクエアクリニック副院長の本間龍介医師は、いかなる調理法のトマトも口にしない。
「栄養豊富なトマトには、アレルギー症状の原因物質となるヒスタミンが含まれています。私はトマトアレルギーではありませんが、遺伝的にヒスタミンを分解する酵素が働きにくいので、トマトを口にすると皮膚に痒みが出たり赤くなったりします。
同様に、腸壁にある粘膜が傷んでいる人は、ヒスタミンを分解する酵素がつくられにくく、痒みなどが生じるケースがある。ヒスタミンは脳にダイレクトに刺激を与える物質なので、子供の場合は落ち着きがなくなったり、大人は集中力が続かないという状態になることもあり得ます。
また、何らかのアレルギーを持つ人は、ヒスタミンを多く含む食材が体に合わない傾向があります。アトピーなどのアレルギーを持つ人はより一層気をつけてほしい」(本間医師)
近年、花粉症の人が果物や野菜を摂ると、アレルギー症状が出ることが報告されている。患者の多いスギ花粉症の人は、トマトでアレルギー症状が出るとされる。決して“万人に対して万能”の健康食ではないのだ。
※週刊ポスト2019年5月17・24日号