GWに遠出をして、車のトラブルに見舞われた人もいるかもしれない。時には車を押すような事態になることもあるが、運転者が未熟でケガをした場合、責任の所在はどうなるのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
友人と雪山をドライブ中、坂道で雪にタイヤが取られ、立ち往生している車を発見。私たちは運転者に声をかけ、後ろから車を押すことに。しかし、運転者が未熟で車が勢いよく後退し、結果的に友人は足を負傷してしまいました。この場合、善意でしたことですが、友人は運転者に治療費を請求できますか。
【回答】
自動車損害賠償保障法(自賠法)第3条では、「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる」と定めています。「自己のために自動車を運行の用に供する者」(運行供用者)とは、自動車の運行を支配して自動車の運行による利益を得ているものをいいますが、運転者は運行供用者に含まれます。
この「運行によって」人身事故が起きたことが前提ですが、「運行」とは自動車をその装置の用い方に従い用いることをいいます。
エンジンをかけて発進するのは、自動車本来の利用方法ですから、「その(自動車の)運行」です。そして友人のケガは、その運行により生じた因果関係のある条項によって生じたので、「運行によって」発生した人身事故といえます。
そうであれば、運転者は友人のケガにより生じた損害を賠償する義務があります。この運転者の賠償責任の義務は極めて厳格で、運行供用者が運転に関して過失がなかったこと、ケガの原因は運行供用者や運転者以外の第三者に故意や過失があって発生したこと、自動車に欠陥がなかったことを証明しない限りは免れません。