日本映画史に名を残す大女優・京マチ子(享年95)が、5月12日に心不全で亡くなった。黒澤明監督の『羅生門』、溝口健二監督の『雨月物語』など数々の名作に出演し、世界各国の映画祭を席巻した彼女は、私生活では生涯独身を貫いた。だが、その代わり、彼女の晩年は“仲間”に囲まれていたという。京を知る芸能関係者の話。
「10年ほど前から都心の高層マンションで一人暮らしをされていたのですが、そのマンションはドラマプロデューサーの石井ふく子さん(92)や、女優の奈良岡朋子さん(89)、若尾文子さん(85)も住んでいたんです。石井さんが声をかけて、独り身の女優さんが一人、また一人と集まっていったそうです。たまにみんなで集まって食事したり、残り物があればお裾分けしたり、みんなで助け合って生活していたといいます」
この“リアルやすらぎの郷”ともいうべき生活について、石井氏は本誌記者にこう話したことがあった。
「何かあったらお互いに電話したりね。毎年、元日にウチでお雑煮でお祝いするんです。みなさんお一人様ですし、同じマンションに暮らしていると色々と楽なんですよ。田舎じゃなくて都心っていうのが良いんです。病院も近いし、テレビ局も近いし、どこに行くにも便利。だからみんな、ここから離れようとしないんです(笑い)」
大往生の影には、一つ屋根の下で支え合った芝居仲間の存在があった。
※週刊ポスト2019年5月31日号