トラック・バスなどの商用車で国内トップを走る日野自動車。2018年には世界販売台数で初めて20万台を突破するなど、その勢いを海外に広げている。一方、国内ではドライバー不足による「物流危機」が深刻になりつつある。この難局をトラックメーカーとしてどう乗り越えていくのか。経済ジャーナリストの福田俊之氏が下義生(しも・よしお)社長(60)に訊いた。
──令和元年がスタートしましたが、30年前の平成元年(1989年)には何をしていましたか?
下:入社から9年目、当時は製品開発部の所属でしたね。主に新型バスの企画・開発に携わっていました。その頃の仕事で最も思い出深いのは、1990年に発売した高級観光バス「セレガ」ですね。技術屋としてやりたいことをすべて詰め込みました。
バス内を4つのゾーンに分けて空調をコントロールできるようにしました。たとえば、日中に東京から大阪方面へ走るバスの場合、左側(南側)の座席だけ日が当たって暑くなってしまいます。また、バスは後ろにエンジンがついているので、前方より後部座席の温度が上がりやすい。つまり、エアコンを一元的に管理していたのでは、すべてのお客様に快適な環境を提供できない。そこで空調の効かせ方をゾーンごとに変えて、問題を解決したのです。
その他にも、スピーカーの音質を向上させたり、美しさにこだわった照明をつけたり……とにかく豪華なバスを完成させましたね。