ミサイル実験を再開するなど、北朝鮮が先鋭化の兆しを見せている。東アジアの安全保障を考える上で韓国との協力体制は必要だが、日韓の対立には、終わりが見えない。作家・佐藤優氏が語る。
「韓国の影響力が強まった背景には、経済成長があります。1980年の時点で、名目GDPが約1兆1000億ドルの日本に対し、韓国は約650億ドル。17倍近くも離れていました。それがいまや、日本が約5兆7000億ドルで、韓国が約1兆6500億ドルと3倍ちょっとの差しかない。
しかも韓国は日本の半分以下の人口5100万人。1人あたりのGDPで、日本は約4万ドル、韓国が3万ドル。これに購買力平価をくわえて考えると生活水準はさして変わらない。
インバウンドで来日した裕福な韓国人は、皮膚感覚として日本の生活水準を低いと感じている。その結果、韓国が経済的に弱かった時期に結ばれた日韓基本条約や日韓請求権協定が不当な条約に見えてきている。だから反日感情が高まっているんです」
2018年末、韓国海軍の駆逐艦が自衛隊の哨戒機にレーダー照射する事件が起こり、2019年2月には韓国国会議長による天皇(現上皇)への謝罪要求発言があった。そのたびに日本では、「韓国はとんでもない国だ」といった議論が起こった。しかし、従来の力関係をベースに隣国と接しているばかりでは、何も解決できないと佐藤氏は説く。
「最終的には外交は、国力と国力の均衡点が落としどころになる。韓国に対して、優位でいたいなら国力を上げていくしかない」
*佐藤優・片山杜秀著『平成史』(小学館文庫)を再構成。同書の刊行記念イベント「令和時代を生き抜くために」が6月24日に紀伊國屋ホールにて行われる。詳細はhttps://www.kinokuniya.co.jp/c/label/20190424103000.html