十分な睡眠は健康の基本だが、“とりすぎ”は逆効果になる。約8万世帯計20万人を対象にした総務省の「社会生活基本調査」(2011年度)によれば、日本人は40~50代で最も睡眠時間が減り、60歳以降になると、年齢とともに睡眠時間が増加する傾向があるという。
全体の平均睡眠時間が7.42時間だったのに対し、65歳男性の平均は8.03時間。80歳では9.02時間、85歳では9.4時間にまで増えていた。
リタイア後の生活は時間の余裕もあり、睡眠時間も増えやすいが、ここにはリスクが潜む。
2017年にアメリカの神経学会が約2400人の高齢者(平均年齢72歳)を対象に行なった調査によれば、1日9時間以上睡眠をとると、それ以下の人間に比べて認知症の発症率が2倍になることが判明した。
2015年に行なわれたアメリカの老年医学会と精神医学会の共同研究でも、65歳以上の高齢者の「推奨睡眠時間」は7~8時間と定めている。
前述したように、日本人は年を重ねるごとに睡眠時間が増加していくが、むしろ高齢者には長く寝すぎるリスクが潜んでいるということだ。
※週刊ポスト2019年5月31日号