今年3月、厚生労働省が3年ごとに実施している「患者調査」の最新版が公表された。それによると、2017年の糖尿病患者数は328万9000人。前回の調査から12万3000人増加し、過去最多となった。
糖尿病の患者数が増えているのは、人間に限ったことではない。近年、糖尿病を発症する猫が増えていると、JVCC二次動物医療センター目黒病院センター長の佐藤貴紀さんは言う。
「糖尿病とは、血液中のブドウ糖を細胞内に取り込む“インスリン”というホルモンが、不足したり働きが鈍くなることで、血糖値が下がらない状態が続く病気のことです。血糖値が高い状態が続くと、体にさまざまな異変が出ます」(佐藤さん・以下同)
糖尿病には、インスリンがまったく足りていない“1型糖尿病”と、インスリンは出ているが不足している、もしくはインスリンの機能が低下している“2型糖尿病”の2種類がある。犬は1型糖尿病が多いが、猫の糖尿病は約8割が2型糖尿病だという。
インスリンが正常に働かなくなる原因は、遺伝や甲状腺の疾患などさまざま。その中でも特に猫に多いのが、“肥満”だ。
「人間も2型糖尿病の場合、運動不足や食べすぎなど、生活習慣が影響すると考えられていますが、猫も同じ。肥満になると、インスリンの働きが悪くなるため、太り気味の猫は糖尿病の発症リスクが高くなります」
では、糖尿病を発症するとどのような症状が表れるのか。初期段階の糖尿病の猫は、元気で食欲旺盛なことが多く、わかりにくいという。
「いつもより水をたくさん飲むようになったり、オシッコの量が増えるのが特徴です。また、食欲が増す子も。その後さらに症状が進行すると、元気がなくなり、食欲も落ち、やせていきます。明らかにいつもと違う場合は、早めにかかりつけの動物病院に相談しましょう」
糖尿病は一度発症すると完治は難しい。症状の進行を遅らせるためにも、常日頃から愛猫の食事量・飲水量・尿量の変化に注意しておくことが大事となる。そして糖尿病と診断されたら、早めに治療を開始しよう。
「糖尿病の治療は、血糖値のコントロールが鍵となります。猫の場合、血糖降下剤を使用することもありますが、ほとんどがインスリン投与を行います」
猫の糖尿病治療は、インスリン投与が一般的。決まった時間にインスリン注射を打つことで、血糖値が安定する。
食事療法も重要となる。1日に必要なカロリーを算出し、飼い主が体重管理をしよう。
「猫は興奮したり、身の危険やストレスを感じると血糖値が上がります。血糖値が常に高い状態は体によくないので、ストレスになるようなことは避け、穏やかに過ごせる環境を用意してあげましょう」
肥満は百害あって一利なし。愛猫が欲しがるからとエサを与えすぎず、適度な運動と食事管理で健康を守ろう。
※女性セブン2019年6月6日号