今年6月末~7月にアゼルバイジャンで開かれる「世界遺産委員会」で、「百舌鳥・古市古墳群(もず・ふるいちこふんぐん)」の世界文化遺産登録がほぼ確実な情勢だ。歴史の教科書にも登場し「日本最大」として知られる仁徳天皇陵など、49基の古墳からなる。日本人なら誰でも知っているようで、実は知らない「古墳」の謎を歴史作家の島崎晋氏が解説する。
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大阪府の悲願がまもなく叶おうとしている。百舌鳥・古市古墳群の世界文化遺産への登録が今年の7月にも実現しようとしているのだ。大阪府としては初の世界遺産登録となる。
古墳とは古代における有力者の墓のことで、文化庁の統計によれば、日本全国で発見された古墳・横穴の総数は約16万基。日本列島に広範囲に散在しているが、巨大古墳と呼ばれる大きなものは現在の奈良県と大阪府に集中している。そのなかでも4世紀後半から5世紀後半の古墳時代最盛期のものがもっとも集中しているのが、大阪府堺市から羽曳野市・藤井寺市の一帯で、西寄りにある百舌鳥と東寄りにある古市古墳群とをあわせ、百舌鳥・古市古墳群と呼ばれている。
百舌鳥・古市古墳群には円墳、方墳、前方後方墳、前方後円墳の4種類があるが、このうち巨大古墳に分類されるのは後二者で、世界文化遺産への登録にあたっては、「顕著な普遍的価値」を有するか否かが審査の大きなポイントであった。単なる巨大墳墓では落選した可能性が高く、百舌鳥・古市古墳群の場合、大小の古墳が集中していることに加え、前方後円墳という形状が世界的に見ても極めて特殊で、なおかつ計算し尽くされた美しい造形が審査員の心を捉えたものと考えられる。
正式に世界文化遺産に登録されれば、国連の下部機関であるユネスコから助成金が出される。それには行き届いた維持管理と一般公開が前提となるが、宮内庁の管轄下にあり、内部への立ち入りが許されない古墳は大丈夫なのかとの不安はあった。しかし、一般人の上陸を禁止している宗像大社の沖ノ島が世界遺産に指定された前例(「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群として、2017年に登録)ができ、外観だけの公開でも問題なしとなったことで、この問題はクリアとなった。
ところで、百舌鳥古墳群のなかで最大規模を誇るものには仁徳天皇陵=大仙陵(大山)古墳、同じく古市古墳群のそれには応神天皇陵=誉田御廟山(誉田山)古墳と、大きく二つの呼び方がある。なぜかといえば、古墳に眠るのが誰なのか正確にはわからないからである。