人生100年時代のライフプランを考えるとき、仕事を完全に引退する70代以降は、効率的に収入を「増やす」ことに注力する期間から、できる限り資産を「減らさない」ための工夫が必要な局面へと移る。ポイントは医療・介護の自己負担を減らせる公的扶助を熟知することだ。必要な手続きを漏らさず、各種制度を最大限活用することで、安心して人生の締めくくりを迎えられるのだ。
この年代から大きくのしかかってくるのが「医療費」の負担だ。厚労省の推計した「生涯医療費」(平成28年度)によれば、国民1人あたりの平均は2700万円になる。
そのうち70歳からの医療費は半分にあたる1350万円を占める。リタイア後の医療費と向き合うことは避けては通れない。そこで、図にあるような公的扶助をフルに活用したい。
たとえば70~74歳の一般的な年金生活者は、医療機関に高齢受給者証を提示すれば、医療費の自己負担が2割になる。75歳からは後期高齢者医療制度が適用されて、自己負担は1割で済む。
“とはいえ、入院や手術となると費用がかさむのではないか”と案ずる人もいるだろうが、高額療養費制度が利用できる。
「月額の医療費がいくらになっても、自己負担額の上限を超えたら超過分が払い戻されます。所得によって上限は異なりますが、70歳以上で住民税非課税世帯の場合、自己負担の上限は月2万4600円(以下、上限額の前提は同条件)です。
所得区分によっては、本来は必要な払い戻しまでの審査を待つ必要もなくなる。住民税非課税世帯なら高齢者受給証(70~74歳)や健康保険証(75歳以上)に加え、市区町村に申請すれば入手できる限度額適用・標準負担額減額認定証を提示することで、窓口で支払う額を自己負担上限までに抑えることができるのです」(介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子氏)