最近ワイドショーや情報番組に、起業家や実業家の姿を見かける。小型の観測ロケット「MOMO」3号機の打ち上げに成功した堀江貴文氏、大学の研究者として従事するかたわら、テクノロジーベンチャーの経営者でもあるメディアアーティスト・落合陽一氏、ライブ配信アプリ「SHOWROOM」の前田裕二社長、幻冬舎の編集者でありながら、ベビーシッターのマッチング会社などさまざまな企業の商品やサービスのプロデュースを手掛ける箕輪厚介氏。彼ら、”起業家コメンテーター”たちが今、メディアに求められる理由とは?
◇「社長ブーム」の新たな潮流
バイタリティ旺盛な経営者は、これまでもテレビの中を賑わせてきた。「アパホテル」元谷芙美子社長、人気寿司チェーン「すしざんまい」を経営する「喜代村」木村清社長、 「高須クリニック」高須克弥院長、「ジャパネットたかた創業者」髙田明氏など、メディアにもよく登場するトップリーダーはいた。
だが、彼らはいずれもそのビジュアルインパクトや、芸能人とはまた異なる、どこか浮世離れしたキャラクターが人気の理由だった。また、彼らが露出する番組のジャンルと言えばトークバラエティや豪邸訪問など限定的だった印象が強かった。
一方、冒頭に挙げた経営者たちが主戦場とするのが、ワイドショーや情報番組だ。
◇ネット社会の生き方を教示
「SHOWROOM」前田社長は、箕輪氏と交互に火曜日の『スッキリ』(日本テレビ系)のコメンテーターとして出演。その箕輪氏はまた、『サンデー・ジャポン』(TBS系)にも頻繁に顔を出す。堀江氏も『サンジャポ』に不定期で登場するほか、『5時に夢中!』(TOKYO MX)金曜日の月1レギュラーでもある。落合陽一氏は『news zero』(日本テレビ系)の火曜にコメンテーターとして出演中。
硬軟幅広い番組で活躍する彼らだが、特徴的なのはいずれもSNS時代の寵児ということだ。箕輪氏も本という旧来のメディアにかかわる仕事をしながら、その生き残り をSNSというデジタルでの盛り上がりに求めている。動画配信サービスを手掛ける前田氏は言うまでもないし、堀江氏も東京大学文学部在学中にネットと出会い起業した人物だ。
もはや生活がネットと切り離せないものになってきている今、彼らはそのためのリテラシーを我々に教示するガイドとしての役割も果たしてくれている。
例えば4月23日の『スッキリ』では、劇場版『名探偵コナン』をこれから観に行くとツイートしたネットユーザーに、強制的に映画の犯人の名前を送りつけるという悪質ユーザーの存在を紹介。すると前田氏は、「Twitterには、例えば『犯人』という言葉を含む文章を全く見なくなるようにする機能もある。見たくない情報を見ないための工夫も覚えないといけない」と、向き合い方も提示していた。
ちなみに 前田氏は、5月11日放送の『新・日本男児と中居』(日本テレビ系)にも登場。その時、話題にあがったのが、人工知能を開発する会社社長・浜道崇氏。同氏は手の甲にICチップを自ら埋め込み、それをかざすことで家の鍵を開けているそうで、「自分をブーストアップしていくことが楽しみ」と繰り返し発言した。
MCの中居正広はそのブーストアップという言葉の意味がわからず、また彼の考えに疑問を抱いていたが、前田氏は「人間の機能を拡張していくことにロマンがあるわけですよね?」とわかりやすく説明してくれた。浜道氏は「そうです。やっぱり前田さんわかってる」と評価していたが、つまり彼ら実業家コメンテーターは、単にネット世代のビジネスパーソンという一面だけではなく、新たな価値観や仕組みをテレビの視聴者にもわかりやすく説明する「咀嚼力」を備えているのである。
また箕輪氏は5月14日の『スッキリ』に出た際、こんなことを述べていた。この日は、自分とは気づかれないように悪口を投稿する「裏アカウント」の特集が組まれていたが、同氏は、自分にも罵詈雑言が毎日のように送りつけられてくると言及。だがその人物のTwitterを覗くと、他の人々にも同じように攻撃していると述べたうえで、そのユーザーについて「そういう人間になってしまっているから全く傷つかない。悪意を言うAIにしか見えない」と、誹謗中傷との対峙の仕方を指南していた。
◇経営者の視点からのコメント