5月28日、神奈川県川崎市多摩区の路上で小学生ら19人が男に襲われ、2人が殺害される事件が発生した。犯行に及んだ同市に住む岩崎隆一容疑者は現場で自らの首を刺し、死亡。警察は被疑者死亡のまま書類送検する方針だ。
被害に遭った児童たちが通っていたのが私立の名門校、カリタス小学校だった。幼稚園から高校まであるカトリックの学校で、中学からは女子校となっている。小学校は共学だが、男子児童は少ない。登校には原則として市営バスかスクールバスを使うことになっているという。
恵まれた環境で学ぶ子供たちをターゲットにした犯罪といえば、2001年の大阪教育大学附属池田小学校事件が思い起こされる。1、2年生8人が命を落とし、教師を含む15人が負傷した。包丁を手に犯行に及んだ宅間守は本人の希望通りに死刑判決を受け、刑は2004年に執行された。
精神科医の片田珠美さんは、この事件と川崎の事件の類似性を指摘する。
「対象が小学生で非常に似通っています。今回の事件では、本人が犯行後、自殺によって死亡しているので『拡大自殺』でもあります。拡大自殺とは、自分ではなく社会や世間のせいで自分は人生に絶望することになったと考え、復讐願望を持つ人物が、社会や世間を巻き添えにして引き起こす自殺です。
そして、拡大自殺は無差別殺人とセットになりやすい。1999年にアメリカのコロンバイン高校で起きた銃の乱射事件も、2007年にバージニア工科大学で起きた銃乱射事件もそうです。絶望感と復讐願望が、無差別殺人と自死につながるのです」
さらに片田医師は、無差別殺人には、対象を絞らず不特定多数を攻撃するタイプと、宅間が「エリート校の児童」を狙ったように、ターゲットを絞るケースがあるという。
「今回の事件も池田小の事件も、明らかにエリートの卵を対象にしています。自分の境遇が恵まれないのは、社会や世間、親などのせいという他責的傾向に、なんらかの理由で被害妄想が組み合わさると、周囲から迫害を受けていると感じ、迫害の原因となっているのはエリートだという思い込みに基づいて、攻撃しようとなるのです。今回も根底にはエリート、とりわけ、カリタス小という環境への羨望や敵意があったのでしょう」
※女性セブン2019年6月13日号