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日本では利用頻度高い鎮痛剤 海外では避けられる傾向

鎮痛剤は海外では避けられる傾向にあるという(写真/PIXTA)

 埼玉県の村下和美さん(43才・パート主婦)は、GWに家族でヨーロッパ旅行に出かけたママ友の体験談を聞いて驚いたという。

「彼女はドイツ滞在中に熱を出し、病院にかかったんだそうです。ツアーの海外旅行保険に入っていたので、費用の心配もない、ということもあったみたいなんですけどね。

 でも、診察した現地の医師は、薬を出してくれなかったらしいんです。代わりにすすめられたのは、なんとハーブティー。半信半疑ながら、飲んでみたところ、それがよく効いたらしくて…。そんな経験をして以降、『こんなにたくさん必要かしら?』と薬箱を引っくり返して、一つひとつ見直したそうです」

 薬を出さないどころかハーブティーをすすめる医師がいるとは驚きだが、新潟大学名誉教授で医師の岡田正彦さんはこんなふうに話す。

「ドイツや北欧など、ヨーロッパの一部の国では薬を極力使わず、予防に力を入れている。ですから、日本と比べてあまり病院にかからず、薬にも頼らない傾向があります」

 あらためて私たちの日常を思い返してほしい。ちょっとした体調不良で病院にかかったり、ドラッグストアに市販薬を買いに走ったりしてはいないだろうか。薬剤師の宇多川久美子さんは、日本の現状に警鐘を鳴らす。

「かぜ薬のCMを例に取っても、つらい症状が薬でスッキリ治るというのがお決まり。そういうものを子供の頃から見ているので、日本人は何かあれば薬に頼るよう、巧妙にすり込まれているように思えます。実際、日本人がよくのむ薬のなかには海外ではつかわれていないものも多くあるのです」

 あなたも、海外では見向きもされない“ガラパゴス薬”を、知らずに口にしているかもしれない──。

 日本では常備薬として人気でも、海外旅行に行くと手に入らない薬も少なくない。海外の医療に詳しい医療経済ジャーナリストの室井一辰さんが話す。

「代表的なのが『エヌセイズ(NSAIDs)』を成分とする鎮痛薬です。たとえば、『ロキソプロフェン』『アスピリン』『セレコックス』などは、日本でもよく使われていますが、使いすぎると胃を荒らす副作用があるために極力、アメリカでは使わないようになっています。加えて『アスピリン』系の鎮痛薬は喘息の副作用も心配されるので避けられます。

 そういった意味で日本では副作用が軽視される傾向があるといえます。もっともアメリカでも、日本であまり使われないタイプの鎮痛薬である『オピオイド』の乱用が社会問題になっています。鎮痛薬は安易に使いがちですが、問題も大きいのです」

 鎮痛薬「プレガバリン」(商品名「リリカ」)は、腰痛や坐骨神経痛の痛みによく効くとされ、国内で販売されるすべての薬剤のなかで売り上げトップ(2017年、937億円)だ。しかし、アメリカやヨーロッパでは使用用途が細かく制限され、多用されていない。在米医師の大西睦子さんが解説する。

「米メリーランド大学医学部の研究者らは、腰痛や坐骨神経痛への鎮痛効果はまったくないか、あっても最小限だとしています。そればかりか、過剰に処方されることで、めまい、不安、うつ病を引き起こす危険性まで指摘されているのです」

※女性セブン2019年6月13日号

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