テレビ視聴率が全体的に長期低落傾向を続けるなか、スポーツ中継だけは強いと言われたのも過去の話。人気があるはずのプロ野球やサッカーJリーグの試合も中継が激減し、6月にはとうとう、初めて日本代表戦がネット配信限定となり、スポーツ中継の地上波離れが加速している。ジャーナリストの西田宗千佳氏が、スポーツを「ネットで見る」ことが必然となった背景について解説する。
* * *
6月14日より開催される「CONMEBOLコパアメリカ ブラジル2019」。サッカーの国際試合といえば、日本代表戦が盛り上がるものだが、今回、少々特別な事情がある。テレビでは中継されず、ネット配信のDAZNでのみ中継されるのだ。
だが、冷静に考えると、もはや騒ぐようなことではないかもしれない。スポーツにおいても「ネットで見る」ことはすでに特殊な話はないからだ。改めて「スポーツをネットで観戦する」ということを考えてみたい。
■積極展開するDAZN、場所・時間を問わない良さをアピール
スポーツがネット配信されることはどういう意味を持っているのだろうか? 本質的には、テレビの電波の代わりにネットを使った、というだけに過ぎない。過去にはネット配信は特別なものだったが、今はサービスの充実が進んでいる。
特にわかりやすいのは、スポーツ専門サービスである「DAZN」の存在だろう。2016年夏のサービス開始以降、同年6月にVリーグ機構(日本バレーボールリーグ機構)と、2017年からはJリーグ(日本プロサッカーリーグ)と、そして2018年はプロ野球と配信契約を交わしたことで、日本国内におけるメジャーなスポーツを幅広くカバーする存在になった。特に2018年以降は、ボクシングの世界タイトル戦の配信権を積極的に獲得しており、「独占ライブ配信」することも増えてきた。
今も、もっとも多くの人が気軽に見られるのが「地上波」であることに変わりはない。しかし、時差の関係や競技そのものの人気などを勘案すると、地上波で放送することが割に合わない例もある。特に最近は、放送権料に関する交渉も厳しくなり、時差の関係で深夜・早朝にしか放送できず、視聴率もスポンサー獲得も見込めない場合には、「無理をしたくない」と考える局が出てきた。
以前よりそうした事情があるものは、衛星放送局がカバーしてきた。WOWOWやスカパー!などだ。地上波では難しくても、そのスポーツにファンがいなくなったわけではない。むしろ、マスが注目しづらいだけで、ファンにとってはなにより大切なものだ。だから、こそ、有料放送であるそれらの局は、放送権を取得して「独占放送」してきた。
だが、そこに今はネット配信も入ってきている。現在のネット配信は、画質的にも放送と大差ない。機器もスマートフォンからパソコン、テレビまで、多彩な機器で受信可能になった。なにより、放送では「リアルタイム」が基本だが、ネット配信の場合、リアルタイム視聴だけでなく、あとから好きな時間に「オンデマンド視聴」もできる。スマホを使うなら「好きな場所で」見ることもできる。
DAZNも、サービス初期には映像の乱れなどで苦情が相次いだが、今は品質も安定した。Jリーグについていえば、2017年以前、スカパー!で中継されている時より、使われているカメラ数も増えている。