【著者に訊け】
トミヤマユキコさん/『夫婦ってなんだ?』/筑摩書房/1512円
【本の内容】
《いま一番おもしろくて勢いのあるコンテンツってひょっとして“夫婦”なのでは? そう思いたくなるほど、夫婦の周辺が騒がしい。結婚、離婚、妊娠、出産、不倫、セックスレス、モラハラ、DV。ワイドショーやネットニュースを日夜賑わせているこれらの言葉は、すべて夫婦と紐づいている》。かくしてトミヤマさんは夫婦について考え、探っていく。俎上に載せるのは『魔女の宅急便』からイチロー、樹木希林夫妻まで様々。笑って唸って夫婦について考えられる。
夫婦って何なんだろう。芸能人夫婦や、漫画・小説・映画などの作品に描かれた夫婦、「ママタレ」「仮面夫婦」「年の差婚」などの現象も例にとりながら、立てた問いの答えを探していった。
「調べれば調べるほどわからなくなったっていうのが結論ですね。でも、ほっとしました。『夫婦ってこうあるべき』と言う人は多いけど、実際にはすごく多様で、結構、みんな好き勝手にやっている。そういうことが本を読んでもらえばわかると思います」
本を読んだ20代、30代の友人からは、「これなら大丈夫かも」という感想をもらったそうだ。
「若い人がよく、『無理ゲー(注・難易度が高すぎてクリアできないゲームのこと)』って言い方をしますけど、そもそも結婚ってなかなかの『無理ゲー』で、ほとんどの人が何の経験もなく挑むもの。それを恋愛感情という一本の柱で何十年も支えていくのは難しいはずで、あまり愛とか信じすぎない方がいいんじゃないですかね」
トミヤマさん自身は結婚6年目。バンドマンの夫は、大学のサークルの先輩で、「先輩・後輩」「フリーランスで働く仲間」といった何本かの柱があってうまくいっているという。
ちなみに「美容師」「バーテンダー」「バンドマン」は「付き合ってはいけない3B」と呼ばれているそうで、そうした世間の「決めつけ」に対するやんわりとした反論として書かれたエッセイも、本には収められている。
「私自身は結婚願望がまったくなくて、だから過剰に期待することもなく、夫婦って他人事みたいな感覚があります。だからこそ、観察するのが面白い、というところはありました」
先ごろ退位された上皇・上皇后陛下の夫婦像の、現代的な新しさについても考察している。
「退位を前にした誕生日会見で、奥さまへの感謝の思いを語られましたよね。前の天皇陛下だと、たぶんありえないことで、陰で伝えるのではなく、あえて、人前で言葉にされたと思うんです。古き良き夫婦でありつつ、現代的にアップデートされた夫婦のお手本でもある。これって実は難しくて、すごいことだと思います」
◆取材・構成/佐久間文子
※女性セブン2019年6月13日号