ネットの動画サービスは中国でも破竹の勢いだが、案の定、事件にも事欠かないようである。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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かねてから深刻な社会問題にもなっている「中国版ユーチューバー」と呼ばれる「直播」(ライブ)のキャスターへの“投げ銭”問題が、ここにきて再び注目を集めている。
きっかけは5月の下旬、多くのメディアが掲載した記事である。そのタイトルは、〈11歳の女の子 ライブのキャスターに200万元近い“投げ銭”! このカネはどうやって回収されたのか〉である。
党中央機関紙『人民日報』などたくさんのメディアが掲載した。記事によれば、11歳の女の子は小学5年生になったばかり。ネットのライブストリーミングで個人発信をしているキャスターと知り合い、コミュニケーションをとるうちにのめり込み、言葉巧みに“投げ銭”に誘導されたという。
といっても金額が200万元では、子供のミスでは済まされない額だ。対日本円で人民元が下がっている今でも3200万円前後の支出となるのだ。
11歳の洋洋が、ネットを通じて知り合ったのは4人のキャスター。洋洋からすればいずれも「お兄さん」であり、「お姉さん」だったが、なかには洋洋が「娘」と呼んでいたキャスターもいて、そのキャスターも11歳の洋洋を「お母さん」と呼んでいたというから不思議である。
いずれにせよ洋洋は、母親のスマートフォンを使い、そのなかにあるカードから支払いの手続きをしていた。母親が買い物をするときに見て、暗証番号を知っていたというのだ。
ここまでは、これまでもさんざん話題になってきた問題だが、今回の焦点は、そうした被害に遭った保護者が、キャスターに振り込まれた金を回収できたという話である。記事中でコメントを寄せている弁護士によれば、9歳から18歳までの場合、保護者が知らないところで手続されたことを証明できれば、そうしたお金は回収できるというのだ。
それにしてもマンションが変えてしまえるほどの金額がスマホ一つで動かせてしまう環境にも驚かされるニュースである。