相続で子供に損をさせないための親の「終活」方法と、遺された家族がトラブルを避けるにはどんな手続きが有効なのか。ポイントは、40年ぶりに改正され、今年7月から実施される相続法(民法改正)の新制度をフルに活用する手続きだ。
民法改正によって介護の「特別の寄与」を請求できるようになる。これまでは故人の介護を長男の嫁などが担っていても、法定相続人ではない嫁は、遺産を相続することはできなかった。その労に報いるために作られた制度だが、ハードルは高い。「税理士法人タックス・アイズ」の代表社員・五十嵐明彦氏の説明。
「病院の送り迎えや、ちょっとした日常生活の介助くらいでは認められない。財産の維持または増加に直接的に貢献した実績が必要と定義され、それを証明するためには具体的な介護日誌などの記録をつけておくことが必要となる」
配偶者の権利も拡充される。これまでは夫の死後、子との遺産分割のために、配偶者が住み慣れた家を処分して現金化せざるを得ないケースや、自宅を相続したために現金のほとんどが子に相続され、配偶者が手元資金に窮する事態があった。
来年4月から施行される「配偶者居住権」の制度では、配偶者は「住む場所」と「現金」の両方を確保できる。配偶者居住権は、自宅の不動産登記に設定する。ただ、所有権を持つのは子なのに、実際に住むのは親というケースが想定されるため、自宅不動産の処分、売却などを巡って、新たな火種ともなりかねないため注意が必要だ。
※週刊ポスト2019年6月7日号