国際情報

「長時間労働上等」の日本と「労働者天国」ドイツ、その違い

なぜドイツは「働きやすい国」とされるのか?(写真/アフロ)

“定時帰り”をモットーとするヒロインを吉高由里子が演じるドラマ『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)が話題だが、残業時間の上限規制や有給休暇の確実な取得などを謳った「働き方改革関連法」が4月1日より施行されて2か月──残業を減らすために昼休み返上で働くなど新たな問題も生まれ、政府の「働き方改革」に課題や問題点を指摘する声が続々と出ている。

「長時間労働」問題が一向に改善しない日本とは対照的に、合理的な働き方を取り入れているのがドイツだ。なぜドイツは労働者天国といわれるのか? ドイツ在住歴5年半、著書に『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)がある、ライターの雨宮紫苑さんがリポートする。

 * * *
「残業をなくすために、ドイツではどのような対策をしていますか」

 1年ほど前、わたしはニュルンベルクにある労働市場・職業研究所(IAB)で、Yahoo!ニュースの特集記事のために取材をしていた。テーマは、『長時間労働』だ。

 ドイツの残業実態についてひととおり聞いたあと、この質問をしてみた。労働者天国かのようにいわれるドイツでは、さぞかし革新的で効果的な残業抑制の施策があるのだろう。と、思いきや。

「ドイツでは最大労働時間が決まっているので、その上限を超えなければ残業しても問題ありません」

 いやまぁそうだけど。そうだけどさ。それでも残業しなきゃいけない、残業させられることに対して、なにかこう、あるんじゃないか?

 というわけで、「その法律を守らない企業に対してはどんな対策を」と質問を重ねる。すると、事も無げに「それは司法の判断になります」と返ってきた。た、たしかに……。

「法律を守らない企業をどうするか」といえば、そりゃ当然「法に則って対処する」という答えになる。それが法治国家というものだ。

 しかし日本には「企業が労働法を守らない」という前提があり、「そんな企業からどう労働者を守るか」が議論の俎上に上がる。それがそもそもおかしいのだ、と気付かされたやりとりだった。

◆「会社」より「仕事内容」を重視するドイツ人

 なぜドイツでは「企業が法律を守る」を前提に話ができるのか。それは、「権利を侵害すると労働者がすぐに声を上げる」「労働環境が悪いと従業員が辞めてしまう」というのが大きい。

 ドイツには、仕事内容はもちろん、どこからどこまで責任があり、どんな目標を達成すべきなのか、どんな権限をもつのか、などが細かく書かれたジョブ・ディスクリプション(職務記述書)がある。

 だから労働者は、「それはわたしの仕事ではありません」「契約で決まっているので、それは拒否します」と堂々と言う。在ドイツ日本大使館がレポートにしているとおり、ドイツでは『各労働者との個別の労働契約の重要性が高い』のだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

広末涼子(時事通信フォト)
【自称・広末涼子容疑者が逮捕】「とってもとっても大スキよ…」台湾フェスで歌声披露して喝采浴びたばかりなのに… 看護師女性に蹴り、傷害容疑
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《中山美穂さん死後4カ月》辻仁成が元妻の誕生日に投稿していた「38文字」の想い…最後の“ワイルド恋人”が今も背負う「彼女の名前」
NEWSポストセブン
工藤遥加(左)の初優勝を支えた父・公康氏(時事通信フォト)
女子ゴルフ・工藤遥加、15年目の初優勝を支えた父子鷹 「勝ち方を教えてほしい」と父・工藤公康に頭を下げて、指導を受けたことも
週刊ポスト
山口組分裂抗争が終結に向けて大きく動いた。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
「うっすら笑みを浮かべる司忍組長」山口組分裂抗争“終結宣言”の前に…六代目山口組が機関紙「創立110周年」をお祝いで大幅リニューアル「歴代組長をカラー写真に」「金ピカ装丁」の“狙い”
NEWSポストセブン
「衆参W(ダブル)選挙」後の政局を予測(石破茂・首相/時事通信フォト)
【政界再編シミュレーション】今夏衆参ダブル選挙なら「自公参院過半数割れ、衆院は190~200議席」 石破首相は退陣で、自民は「連立相手を選ぶための総裁選」へ
週刊ポスト
中居正広氏と報告書に記載のあったホテルの「間取り」
中居正広氏と「タレントU」が女性アナらと4人で過ごした“38万円スイートルーム”は「男女2人きりになりやすいチョイス」
NEWSポストセブン
Tarou「中学校行かない宣言」に関する親の思いとは(本人Xより)
《小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」》両親が明かす“子育ての方針”「配信やゲームで得られる失敗経験が重要」稼いだお金は「個人会社で運営」
NEWSポストセブン
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波も(マツコ・デラックス/時事通信フォト)
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波、バカリズム脚本ドラマ『ホットスポット』配信&DVDへの影響はあるのか 日本テレビは「様々なご意見を頂戴しています」と回答
週刊ポスト
約6年ぶりに開催された宮中晩餐会に参加された愛子さま(時事通信)
《ティアラ着用せず》愛子さま、初めての宮中晩餐会を海外一部メディアが「物足りない初舞台」と指摘した理由
NEWSポストセブン
「フォートナイト」世界大会出場を目指すYouTuber・Tarou(本人Xより)
小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」に批判の声も…筑駒→東大出身の父親が考える「息子の将来設計」
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《妊娠中の真美子さんがスイートルーム室内で観戦》大谷翔平、特別な日に「奇跡のサヨナラHR」で感情爆発 妻のために用意していた「特別契約」の内容
NEWSポストセブン
沖縄・旭琉會の挨拶を受けた司忍組長
《雨に濡れた司忍組長》極秘外交に臨む六代目山口組 沖縄・旭琉會との会談で見せていた笑顔 分裂抗争は“風雲急を告げる”事態に
NEWSポストセブン