ネット番組だから地上波よりも過激で、大胆な表現がしやすい。そんなことが言われているが、果たしてそれは過激で大胆なだけなのか。イラストレーターでコラムニストのヨシムラヒロム氏が、バラエティ番組が持つ骨太な面白さとはどこからやってくるのかについて考えた。
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ここ2年間、毎週ウェブテレビについて記述してきた。当初は「ネタ不足にならなきゃいいけど……」と心配していたが、それも杞憂に終わる。今となってはタレントが自前のチャンネルを持つ時代、海外資本の動画配信サービスにも日本製作のコンテンツが増えた。
YouTube、Amazonプライム・ビデオ、Netflixと取り上げてきたが、なかでもお世話になっているのがAbemaTV。サイバーエージェントとテレビ朝日の共同出資から生まれた局、ここでしか観られないオリジナルコンテンツが充実している。常に新しい企画が立ち上がるため、ニュースに事欠くこともない。よって、ネタに困ったときはAbema!と頼ることも多い。今年5月、そんなAbemaTVが開局3周年を迎えたという。
なにごとも自ら祝うのがAbemaTV方式、今回はバラエティ番組に力を入れてきた。テレビ朝日で23:20~翌0:20に放送される『陸海空 こんなところでヤバいバル』(月曜)、『ロンドンハーツ』(火曜)、『マツコ&有吉 かりそめ天国』(水曜)、『アメトーーク!』(木曜)とコラボ。テレビでは観ることができないAbemaTV特別バージョンが配信される運びとなった。
特別版といっても番組ごとに趣旨は異なる。『陸海空 こんなところでヤバいバル』は既に放送された内容の再編集版、他の3つはオリジナルコンテンツを用意していた。なかでも『ロンドンハーツ』と『アメトーーク!』は、コンプライアンスが緩いと評されるAbemaTVだから配信できる内容に仕上がっていた。
金曜21時台から火曜23時台に異動となった『ロンドンハーツ』。ゴールデンから深夜帯へ、業界的に言えば“降格”ということなのだろう。しかし、結果的には大成功。過激なことが許される時間帯になったことにより、番組は全盛期のキレを取り戻している。AbemaTVと連動した週の地上波放送では全ての時間を使い、狩野英孝と村上健志(フルーツポンチ)のケンカを特集。ただただ面白いだけ、観ていて人生の為になることはない内容。今時珍しい本当のバラエティ番組として機能している。
取り戻した勢いそのままAbemaTVで配信された企画が「今の若手はウラでこんな事やってます ネットだからバラしていいよね15連発!!」。20代の若手芸人が集まり、暴露大会に興じた。
そもそも『ロンドンハーツ』とは、ネットとの親和性が高い番組。なんたって、開始当初の名物企画が「一般人を対象とした恋愛ドッキリ」である。
なかでも印象に残っているのが、一般男性にハニートラップを仕掛ける企画「THE TRIANGLE~ハマった女は彼女の親友~」。番組が雇った無名女性タレントが彼女持ち一般男性を逆ナン。男性は当然浮かれ、女性タレントに夢中になる。逢瀬を重ね(デートの様子も隠し撮りされている)、好き度がマックスになった頃合で、彼女のデート中に女性タレントが乱入。慌てふためく男性をモニタリングしつつ、女性タレントに指示を出す田村淳(ロンドンブーツ)。狼狽した男性は、爆笑必至の理解しがたい行動を必ずとる。ネット上で流通する露悪趣味と通ずる笑いを先取りしていた。