壇上に並んだ4人の視線からは、「創作」をもって現実に対峙しようという強い矜恃と覚悟が感じられた。
今年で第72回を数える日本推理作家協会賞。その贈呈式(5月27日)では、初代の江戸川乱歩から数えて15人目となる協会代表理事に京極夏彦氏が就任することが発表された。
乾杯の挨拶に立った京極氏は、受賞作である、葉真中顕氏の『凍てつく太陽』(長編および連作短編集部門)、澤村伊智氏の「学校は死の匂い」(短編部門)、長山靖生氏の『日本SF精神史【完全版】』(評論・研究部門)について、「日本のエンターテインメントを代表する3作」と激賞。
さらには、出版界をとりまくネガティブな動向が報道で散見されることにも触れ、「こうしたよくない風潮を打開するのは優れた創作だ」と力強く語り、来場者が大きく頷く一幕もあった。
令和初の受賞者となった3氏には、これからも存分に筆を揮ってもらい、読者を唸らせてもらいたい。写真は右から京極氏、葉真中氏、澤村氏、長山氏。
※週刊ポスト2019年6月14日号