ダンスといえば、2012年に公立中学校の授業で武道とともに必須科目になったというニュースが記憶に残っている人も多いだろうが、今、日本中にダンスブームが来ているという。きっかけは、2014年公開の映画『はじまりはヒップホップ』や2016年に大ヒットしたドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)の恋ダンス、2017年に話題となった大阪府立登美丘高校のバブリーダンスなどの影響だとか。
このブーム、若い人だけかと思いきや、昔ディスコやクラブで踊りまくっていた50代以降の間でもじわじわ浸透中。
「みんなと踊るのが好き」「運動は苦手でも、音楽に合わせて踊ると楽しい」と、ダンス熱が再び高まっている。
しかも、高齢者向けの盆踊りやフラダンス、フォークダンスといったのんびりしたダンスではなく、ヒップホップやキレのある音楽に合わせたアップテンポのダンスにトライする人が増えているのだ。
そんなオトナたちのダンスチームが『浅草花やしき』(東京・台東区)で行われる「大人アイドルフェスティバル」に出演すると聞き、早速取材に訪れた。
この日、出演したのは、結成1年の『TSC50』と、活動歴8年で約40曲のレパートリーを誇る『柏おやじダンサーズ』の2組。ともにマイケル・ジャクソン(以下、MJ)を踊る点にこだわっている。
TSC50の主宰者は、女性セブン9号の「目くじら社会」特集で話を聞いたクレーム対応の専門家・津田卓也さん。53才の彼は、仕事柄50~60代の男性にクレーマーが多く、管理職だった人には保守的で元気のない人が多い現状を前に、「このままではクレーマー予備軍が増えてしまう」と、危機感を抱いていた。
「定年を迎え、生きる目的を見失ってしまう人も少なくない。だからこそ、ダンスでかっこいい50代以上のロールモデルになりたいと思ったんです。それで、どうせなら難易度が高いMJを踊って、彼をリアルタイムで知らない平成っ子を驚かせたいと思って」
と、津田さんは微笑む。
TSC50というチーム名は、チーム・スムクリを略した頭文字に、メンバーの平均年齢が50才以上であることと、50才以上の人々に元気とチャレンジ精神を持ってほしいという願いを込めている。
「発足後1年で、メンバーは65人に増えました。ダンス経験ゼロの人がほとんど。昨年、茨城の常磐神社で奉納した『スムーズ・クリミナル』のダンスをSNSにアップしたら“私も踊りたい”と、その輪が関東を中心に北海道から東海地方にまで広がったんです。みなさん、練習の時も楽しそうですよ」(津田さん・以下同)
健康のためにと始めたダンスが今や生きがいとなっているのだ。