国際武道大学准教授の荒川裕志氏さんがチューブを使ったトレーニング法をガイド
世界有数の長寿国である日本では活動的な70代、はつらつとした80代は決して珍しくない。「人生100年時代」が現実のものになってきた現代、「健康寿命」をいかにして延ばすかは、最重要の課題だろう。「健康寿命」とは健康を害して日常生活が制限されたり、介護を受けたりせずに暮らせる期間のこと。トレーニング科学の研究者で、元プロ格闘家という異色の経歴をもつ国際武道大学准教授・荒川裕志さんに、健康寿命を延ばす筋トレ方法について教えてもらった。
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自分の足で歩けることが、健康寿命を延ばすために、いちばん大事です。つまずいて転倒、骨折したことをきっかけに寝たきりになる高齢者は少なくないので、下半身の筋肉を鍛えましょう。
筋肉を増やすためにもっとも効率のいい方法が“筋トレ”です。とくに大殿筋、大腿四頭筋、腸腰筋の3つの筋肉のトレーニングが大事。その際、チューブを使うと自重トレーニングより負荷が高まり、効率よく鍛えられます。
◆大殿筋・大腿四頭筋を鍛える
歩く、立ち上がる、階段を上る、走る、跳ぶなどの動きを強化。強い足腰にし、下半身を安定させる。
(1)足幅を腰幅~肩幅より少し狭めにしてチューブを踏み、両手でチューブを握る。つま先はやや開き気味にし、足はハの字にする。こうすると、脚を屈伸したとき、手とぶつからない。かかとは浮かさず、しゃがんだ状態からスクワットをスタート。
(2)ゆっくりと立ち上がる。やや前傾し、膝関節と股関節を意識する。膝が伸びきるまで立ち上がらず、やや曲がった状態からまた、ゆっくりしゃがみ、繰り返す。
30秒間で10回のペースが目安。これを1セットとし、3セット行う。
◆腸腰筋を鍛える
歩行時に太ももを持ち上げ、脚を前にふりだす機能を強化。つまずきを予防。下腹部がポッコリ突き出るのを体の内部から防ぐ。
(1)椅子に座る。片方の足でチューブを踏み、もう一方の足首にチューブをかける。膝は軽く曲げておく。
(2)膝の角度はそのままで、脚の付け根から、脚全体を上げていく。左右、両方とも行う。
30秒(10回)を1セットとして、3セット行う。
コツは筋肉を限界まで使って疲れさせること。筋トレは基本的に週2回(数日あける)が最適です。毎日してもいいけれど、その必要はありません。労力に見合う効果が得られないからです。
筋トレで軽やかに動ける体になると、心理的にもでかけたくなるし、歩きたくなる。活動量が増えることで間接的にメタボ対策の効果も期待できますよ。
【PROFILE】荒川裕志(あらかわ・ひろし)/昭和56年、福島県生まれ。国際武道大学体育学部准教授。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。専門はバイオメカニクス・トレーニング科学。著書に『効く筋トレ・効かない筋トレ』『最強の自宅トレーニングバイブル』など多数。『サライ』7月号でチューブを使った筋トレ方法を実演動画で解説。8月4日、都内にて筋トレチューブ講座&個別指導会イベントを開催。実演動画・イベントの詳細はともにこちら→https://serai.jp/trainingtubemovie