近年、薬剤を使わずに虫を退治したいという需要が高まってきている。特に、小さい子供やペットがいる家庭では、薬剤に危険はないと説明されても、どうしても気になるという人もいるだろう。
そんなニーズに応えたのが、アース製薬からこの2月に発売された『蚊がホイホイ Mosquito Sweeper(モスキートスイーパー)』(12畳まで使用可。誘引剤の交換は2か月に1度が目安。2万1384円)だ。
薬剤を使わない殺虫剤は、これまでゴキブリ退治の分野で商品化されてきたが、蚊についてはこの商品が初めてだ。開発のスタートは約4年前。2014年の12月までさかのぼる。
薬剤を使わずに蚊を退治するには、おびき寄せて捕獲するしかない。いかに蚊をおびき寄せられるかに注力した。蚊は、人の汗のにおいや体温のほか、黒い色や二酸化炭素に寄っていく性質を持つ。
同社では二酸化炭素に注目し、「光触媒」に着眼した。光触媒とは、そのもの自身が変化することはないが、光を吸収することによって化学反応を起こし、ある特定の反応をみせる物質のことをいう(例えば、植物における「光合成」も光触媒の1つ。葉緑素を触媒として、太陽光を吸収することで二酸化炭素と水が反応し、デンプンと酸素になる)。
光触媒は本来、汚れやにおいなどを分解するのに用いられる技術だが、今回は、二酸化炭素の生成という部分に焦点を当てたのだ。
開発チームは、光触媒の発見者である、東京理科大学の藤嶋昭栄誉教授がユーヴィックスと開発した光触媒技術「TMiP(Titanium Mesh impregnated Photocatalyst)」を応用し、完成させた。さらに、同社が独自に開発した果物由来の誘引剤「SpMA」を搭載。
SpMAは、糖分を好む蚊の性質を利用したもので、砂糖水に比べて約8倍の誘引効果を誇っている。こうして、光触媒の二酸化炭素とSpMA、2つの誘引物質で蚊をおびき寄せることになった。
本体の形状にも工夫を凝らした。『モスキートスイーパー』は、誘引物質でおびき寄せた蚊を、回転するファンで吸い込む仕組みになっているが、誘引物質が噴出する部分と蚊の吸い込み口の位置は異なっている。
一見、吸い込み口が大きい方が蚊を捕らえやすいように思えるがそうではない。蚊は、壁などに止まる性質を持つため、吸い込み口をフェンス構造にし、柱の部分に蚊が止まりやすいようにしたのだ。誘引物質に引き寄せられた蚊が柱に止まったところを、ファンで吸い込み捕まえる形だ。
発売以降、メディアやユーザーからは好意的な意見が多数寄せられた。「殺虫成分で蚊を退治するのは簡単ですが、それに飽き足らずユーザーのニーズに応えたいという、ものづくりのスタンスを評価されたと思っています」と、マーケティング担当者は話す。
これからの季節、安心して使える捕獲機がユーザーの選択肢に加わったことの意味は大きい。
※女性セブン2019年6月20日号